アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
78
-
「こうして…こうやって…あれ?違う…」
ネクタイを結んではやり直してを繰り返し
もう頭がこんがらがってきた。
前はできたのにっ…
「これがこうで…えっと…えっと…」
わからない…
どうしよう。せっかく司が持ってきてくれてっ…
見たいって言ってくれたのにっ…
やっぱり僕は何もできなくて、自分の事さえも
まともにできなくて…どうしようもない奴なんだ。
「もう…嫌っ…うぅ…」
どうしよう、どうしよう…
そうやってずっと悩んでいた僕は時間が
とっくに10分以上経っていた事に気付かなかった。
ーーートントン
「佑月、大丈夫か?」
扉の向こう側で着替えるだけの作業に、時間が
かかっている事に心配し司が様子を見にきた。
その司の返事にも答えられず、小さく縮こまりながら
泣いていた。
「佑月?入るぞ」
返事も何もなかった事に不信感を抱いた司は
扉を開け佑月の元へ歩み寄る。
「こんなところで縮こまってどうしたんだ?ん?」
「…」
「何泣いてんだ。嫌な事でもあったか?」
「…ない」
「じゃあどうした?」
縮こまっている僕を軽々と持ち上げ
膝の上に対面で座らせられた。
「これっ…」
先程結べなくて嫌々になっていたネクタイを
司に差し出し顔を下に向ける。
「ネクタイ…?」
「結び方…わす…れちゃって…」
「僕は…馬鹿だからっ…何もできないから…自分の事すらまともにできなくて…ごめん…なさっ…」
こんな奴で呆れたかな?こんなに馬鹿で捨てられるかな?もう嫌だよ…怖くて司の顔が見れない。
「どれ、貸してみろ」
司は手を出してネクタイを僕の手から取る。
それは急な事でよくわからなかった。
「え…?」
「ああ、悪いが座ったままでいいから前向いてくれるか?」
そう言われて言われるがままにズルズルと
お尻の向きだけ変えて、前を向いた途端、ふわっと司のいつものいい香りが、僕自身を後ろから包み込み、首元にはネクタイがかかっていた。
「ちょっと大人しくしてろよ」
そう耳元で囁かれ、僕の心臓は飛び出しそうだった。
司は僕の首にかかっているネクタイを普段やり慣れているだけあって、サラッと結んでいく。
その時の僕の顔はきっと真っ赤だっただろう。
司の顔があまりにも近く、ネクタイを後ろから抱きしめられながら締めてくれる司はスマートで、とてもかっこよかった。
「ほら、できたぞ」
司のあまりのかっこよさに頭が真っ白に
なっていた間にネクタイはすでに結ばれていた。
「え…あっ」
「立ってみろ」
渋々僕はその場に立ち司の方を見る。
「ふっ、やっぱり似合ってるな」
「あ…ありがと」
「結び方教えてやるから、もう泣くなよ?」
「うんっ」
「お前は何だって頑張ればできる奴だ、決して馬鹿なんかじゃない」
そう言われると、不思議と何でもできるような気がして
頑張ろうと思える。
「結び方…教えてください…」
「よし、偉い子だ」
それから僕らは何回も何回も繰り返し
ネクタイの結び方をマスターした。
ちなみに、司が仕事で出るときは時間があれば僕が
ネクタイを結ぶという事になった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
78 / 95