アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
92
-
ーーーバタンっ!
家に帰ってきた司は扉を勢いよく閉め
掴んでいた柚月の腕を離す。
そのまま司は椅子に座りタバコを吸おうと
懐からタバコを取り出したが、佑月の方をチラッと見て再びタバコを懐に戻した。
そんな彼に声をかけることもできず、手を離された位置から一歩も動かず俯いている佑月。
それを見た司が佑月に問いかける。
「どこに行っていた?」
「…っ」
「言えないか?」
「言え…るっ…」
佑月の言葉に司の表情が少しだけ柔らかくなる。
それを見逃さなかった佑月は今なら言える…
そう思い、ゆっくり口を開く。
「朝…ご飯買いにコンビニ行ってただけなの…」
「コンビニ?あぁ…もしかして置き手紙書いていったの見てねぇのか?」
「て…がみ?」
佑月の何の事を言っているかわからないと言う表情に司は「そういうことか」と呟き席を立つ。
司が向かう先は寝室、そこから出てきた司は手に何やら紙をもっていた。それを佑月に差し出す。
『山城を呼ぶから山城が家来るまで待ってろ、何かあれば山城に言えよ』そう書かれた手紙を読んだ佑月は、ハッと司を再び見る。
「そういう事だ」
「あのっ…ごめんなさい…気づかなくて…」
「いや、いい。俺の置き場所が悪かった」
司はいつもそうだ。絶対僕のせいにはしない。
優しいのは嬉しい。だけど、一歩距離を置かれているような感覚に陥ることがある。まさに今がそれで、もっと本音をぶつけてくれてもいいのに…と我儘なことを思ってしまう。タバコだって気を遣って僕の前では吸わないようにしているけど、本当は僕の前で吸って本来の司を見せて欲しいんだ…。こんな我儘言ったら司は呆れて僕の事捨てちゃうかもしれない。だからこれは胸の内に閉まっておく。
「まぁ、それはいい。コンビニで何かあったか?」
この質問にビクッと体が反応する。
さっきまで怖くて逃げていた…それが再び頭に過ぎる。
きっと司が聞いているのはあの男の人…の事かな…
思い出すだけで目が揺れ、焦点が合わなくなる。
何故かあの人を思い出すと自分がおかしくなりそうだった。
その場に崩れるように座り込み、佑月の体は小刻みに震え始めていた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
92 / 95