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「ふー、ただいま~」
バイトが終わり、家に帰り自室のドアを開ける。すると、
「おかえり」
俺の部屋のベッドを背もたれに片足を立て、平然と本を手にして読んでいた悠理が俺の方へと顔を向ける。
…少し前から、俺たちには変わったことがある。
「またこんな夜に部屋に来て」
そう言いながら俺は肩にかけていたカバンを机の上におろす。
「鳴海だって、こんな夜までバイトなんかして」
すると、悠理はいつも通りしれっとした表情で読んでいた本に再び目を落としながら言った。
「勉強ちゃんとやってんのかよ。最近よくここ来るけど」
「当たり前だろ。やることやって終わらせてからここに来てるに決まってる。」
そう言う悠理は依然として本に視線を落としている。
…つーか、わざわざここで読むものなのか?その難しそうな本は。
俺は悠理からくるりと背を向けて、着ていた服のボタンを外していく。
「まあいいけど、12時まわる前までには家に帰れよ。いくら幼馴染で家が近いからって、あんまり俺んちばっか来ると美里さんが寂しがるだろうし…」
すると、後ろから不意に腕を前にまわされた。
ボタンを外して動かしていた手ごとその腕の中に収められ、俺は仕方なくその動きを止める。
「…悠理」
「今日、苦手な分野のテストで95点だったんだ。」
…はあ?苦手…?苦手で95…?こいつ、遠回しに俺を馬鹿にしてるのか?いやしてるな。
「だから、頑張ったんだから、…ご褒美くらいいいじゃん」
すると、悠理の手に顔を後ろに軽く向けさせられた。
そして、近い悠理の顔にあっと思った時には遅く、口を塞がれる。
腰のあたりを片手で引かれ、もう片方の手で後頭部を支えられる。
悠理の舌が口内に差し込む。
「ゆ、ゆうり、っちょ…」
まだ学校に行って帰った姿のままの、学生服を着ていた悠理の胸を俺は顔を赤らめながら少しだけ力を込めて両手で押し返す。
けど、そんなことが悠理に通用するわけなどないことを、俺も、そして悠理も、知っていて。
「悠理…、」
キスをしながらじっと目を開けこちらの様子を伺ってくる悠理の視線に、俺は冷静さをなくしたように、大きく開いた自分の瞳を落ち着きなく左右に揺らす。
こんなのだめだ…、そうわかっているのに、俺は悠理の行動を止められない。
きっとそうだ。
俺は…、俺を好きだという悠理に、酔いしれている。
悠理に向けられる視線に、紛れもなく、俺は今頬を染めている。
拒むどころか、こうして、彼の腕にしがみついている。
けれど、悠理の手がふと俺の服の中に入ったとき、俺は冷静さを取り戻したかのように悠理の体を向こう側へ強く押し返した。
唇が離れ、悠理がはあはあと息をする俺を見つめる。
「…だ、だめだって、…キスまでだ。」
「何でだよ。キスだけの恋人同士なんて、いねえだろ」
渋々そう言いながらも、悠理は俺から離れてくれた。
そう、俺たちは恋人同士。
…少し前から、恋人同士。
俺は悠理の兄のような存在として、今まで生きてきたつもりだったのに…。
悠理と、こんなことするようになるなんて…。
でも、手放せない。
この温もりを。
…俺は、どうかしている。
「…鳴海」
優しい彼の胸に、俺は安堵するように目を閉じる。
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