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幸せ
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最初に告白してきたのは向こうからだった。
俺がお願いして付き合った訳でもない。
でも、どうしてこうなったんだろう。
俺が、素直じゃないから?
女じゃないから?
先に好きって言ったのはお前なのに。
終わりを告げるのも、お前なの?
いや、違うか、だってまだお前自身、自分の気持ちに気づいてない。
一番近くにいる、俺しか、気づいてない。
言いたくない。
でも、これじゃあなたは幸せになれない。
でも、俺のこと想ってて欲しい。
俺はいつからこんなにお前のことを好きになったんだろう。
なぁ、秀(しゅう)。
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「なぁ、クラブ何はいんの?」
秀との初めての会話。
入学式のあと、HRまでの間、席が前後だった俺たちはクラブについて話して、仲良くなった。
お互い中学が同じ人がクラスにいなかったから、話す相手がいなかった。
「俺は、バスケやろっかなって思ってるんだけど、お前も一緒にやんねぇ?」
ニカって笑って秀が言うから、なんだか断れなかった。
別にバスケが嫌いな訳では無いし、運動部に入ろうかなって思ってたから、特に断る理由があったわけでもない。
今思えばこの時から俺は秀のことが好きだったのかな。
秀はいつから俺のことが好きだったのかな。
いつから、
あの子が気になり始めたのかな。
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「俺、お前が好きだ。男から言われてもきもいって思うかもしんねぇけど、俺、お前のこと好きになっちゃったんだ。」
秀にしては珍しくなんだかとてもネガティブで、少し、緊張もしていた。
俺も、この頃には秀のことが好きだって自覚していて、断るはずもなく、
「俺も、秀が好きだよ。...付き合う?」
と、思わず言った。
1ヶ月
3ヶ月
半年
1年が過ぎて。
今。
終わりを迎える。
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秀に変化が起きたのは、いや、違うか、むしろ現実に気づいたのかもしれない。
男同士で付き合うなんて、なんのメリットもない。
人に言えないし、バレれば周りからの目線が痛くなる。
秀はそんなことを気にするやつじゃないけど、どこかでそれに疲れていたのかな。
付き合って1年が経とうとしていた頃、クラス替えで、秀と離れた。
クラブでは会うけれど、去年まではクラスでずっと一緒に過ごしてきたから少し寂しかった。
でも、決定的だったのは、文化祭の準備。
秀は文化祭委員になって、放課後クラブを休んで準備をすることが多くなった。
文化祭の二日前、クラブが早く終わった俺は、秀、頑張ってるかなってクラスに様子を見に行った。
その時俺は気づいてしまったんだ。
クラスの子と話す秀の顔が、いつもと違うことに。
俺に向けるそれとはまた、別のもので。
できることなら見たくなかった。見ていないふりをしたかった。でも。
でも、俺とお前じゃ一生幸せにはなれない。
男同士じゃつらいことが多すぎる。
このまま捕らえていていいわけがない。
秀の幸せを思うなら、俺は身を引くべきだ。
そう決意できたのも、1ヶ月かかってしまったけど、
でも、頑張ったよな。俺。
だって、まだこんなにもお前のことが好き。
だから、ばいばい、幸せでね、秀。
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「別れよう」
学校帰り、一緒に帰る途中の道、突然告げた俺に心底驚いた顔をする秀。
「え、なんで、どうして」
「秀はさ、あの子のこと、好きになったんだろ?」
あの子、とはもちろん秀のクラスの同じ、文化祭委員の子。
「え、俺。」
「俺、他の子が好きな秀とは付き合えないよ。
なぁ、行ってきなよ。あの子のとこ。好きなんだろ?」
声が震えそうになるのを我慢しながら、秀の背中を叩く。
文化祭のが終わってからも、秀は俺にあの子の話をすることが多くなった。
「すっげぇどんくさくてさ、ほんとバカなんだよ」とか、いっぱい、いっぱいきいたな。
そんな話をする秀はいつもより楽しげで。
あーあ。気づきたくなった。
誰かを好きになる秀なんて、見たくなかった。
でも、このままじゃだめ。さよならを、言わないと。
「秀、後悔する前に行っていいんだよ。」
秀が、ようやく口を開く。
「俺、ちゃんと好きだったよ。お前のこと。
1年間楽しかった。本当に。この関係を壊したくないくらい、本当に楽しかった。
ごめん、ありがとう。」
さよなら。秀。
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