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あれから1年が経ち、俺は2年生になった。
今日は学年があがって初の登校日&進級おめでとうテストの前日だ。
……全然おめでたくない…
クラスも替わり、ほとんど話したこともない奴ばかりが目に入る。
担任が何か説明しているがもうこの空間に疲れてしまって、頭に全く入ってこなかった。
俺は早々に理解することを放棄して左隣に目をやった。
名簿順で窓際になった席からあの中庭が見えた。
…一方的な ひこうき君との不定期な文通はまだ続いていた。
誰なのかもまだみつかっていない。
ただ、分かったことがいくつかある。
1つはひこうき君はどうやら男だということ。文中の一人称が俺だった。
もう1つは彼は先輩だということ。
手紙の内容は大抵が一文で、どうでも良いことが書かれている。
だがその中に時々、進路や自分の性格についての悩みが混ざっていた。
その中身から察するに彼は一個上。今年の3年生だろう。
そしてやはり、彼は真面目な性格のようだ。
ふざけた文章の中にも性格の良さや真面目さが文字に滲み出ていた。
大きさの揃った綺麗な字。いつ見ても丁寧に書かれていた。
だが『ま』や『よ』のまるの部分に少しだけ癖がある。
本人も少しひねくれているのかもしれない。
ブワッ…
開けられた窓から風が吹き込み春特有の香りがした。一緒に一年ぶりのピンクの花弁も入ってきた。
ヒラヒラと回転しながら机の上に着地する。
……紙ひこうきを受けとる度に…彼のことを一つ知る度に、俺の彼への興味は増していく。
向こうはきっと俺のことなど知らないのだろうけれど。
…いや、もしかしたら知っているのかも。
狙ってなのか、そうでないのか。紙ひこうきは俺が中庭に居るときに飛んできた。
それとも俺が居ないときにも実は飛ばしていたのかもしれないが。
俺も向こうも相手のことをよく知らない。
何だか不思議な感じだ。
でもおかげで、1年間退屈はしなかった。
今年はどれくらい届くだろうか。今度はいつ来るだろうか。
内容は?彼のことは?
春休みの間も、早く学校が始まらないかと珍しく俺はウキウキしていた。
紙ひこうきだけのこの関係が、1年でとても大事なものになっていた。
どんどん楽しみになっている。
担任の話はもうとっくに終わっていた。
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