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せんせい
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目を開けると、寮の部屋にいた。回らない頭で辺りを見渡すと、違和感を覚える。
「あれ、僕の部屋ってこんなんじゃ…」
そこまで思ったところでハッと意識が戻る。
そうだ、僕あの倉庫に行って先生に見つかったんだ。
じゃあここは先生の部屋なのか?
辺りを観察していると、扉が開いて先生が出てくる。学校で見たのとは違ってスーツじゃなくて私服だ。
「お、起きたか」
「すみません、僕寝ちゃったんですよね」
「ん?いや気にすんな、お前寝不足だったんだろ?」
とはいえ高校生男子は重かったに違いない。
申し訳なくてもう一度謝ると、先生はポンポンと頭を撫でた。…先生これ癖なのかな。
「どっちかというとお前小柄だろ?そんなに俺だって体力無いわけじゃないしな」
たしかに、僕は水泳をやってる割には小柄だ。
「何より楽な持ち方なら講習で何度も習ってる」
だから気にするな、とまた言って先生は玄関の方へ向かっていった。
戻ってきた先生の手には、見慣れたビニール袋があった。
「これ、お前のだろ?一応持ってきたから」
「う…何から何まですみません…」
あの雨の中を2往復もさせたということか…そう思うと余計に申し訳なくなる。
こんなに迷惑をかけたくはないのに…
先生は謝罪はもう聞くつもりはない、というようにキッチンに向かってコーヒーを淹れてくれた。
付けてくれたミルクと砂糖をしっかり入れるのを見て、ブラックコーヒーを飲みながら先生は笑っていた。
「お子様味覚なんだな」
「まあ…大人でもいるとは思いますけど」
年上と話す機会はあまり多くないから、なにを話せばいいのかわからなくて素っ気ない答え方になる。
それでも先生は楽しそうに笑っていた。
「夕飯はなにが食べたい?」
唐突にそう聞かれて戸惑う。
「えっと…僕は…」
正直、あまり食欲はない。寝たおかげで体調は回復してる気もするが、まだお腹がすくほどではない。
答えあぐねる僕を見て、先生はうーんと考え込んだ。
「じゃあ俺が適当に作るからもう少し休んでな」
「え、僕手伝いますよ」
「なに、料理できるの?」
そう言われて頷く。料理は特別うまいわけではないけどそれなりに作ってる。
「へえ、じゃあ今度食べさせてな。今日は俺が作るからいいよ」
テレビのリモコンを渡されて、どうしたらいいのかわからない。でもそれ以上食い下がるのもなんか迷惑な気もして渋々頷く。
誰かの料理をする音を聞きながらゆっくりするのは、ずいぶん久しぶりだ。
トントンと心地よいリズムで包丁が動く音がして、テレビよりもそちらに耳がいく。
そのうち、さっきも寝ていたはずなのに意識が沈んでしまった。
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