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大丈夫、じゃないかも
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先生の言葉に、緩んでしまった空気がまた張り詰めたのを感じた。
「お前の彼氏が兄の方と付き合い始めてるのは知ってる。でもそれに聞き流すわけにもいかない噂が流れてるのはわかってるだろ」
「なんの、ことです」
我ながら下手な演技だけど、上級生たちの面白半分のからかいとは違う聞かれ方にとまどう。
「噂は噂だ。でも、あれはかなりタチが悪いよな。お前がこんな雨の日にも帰れないくらいには何かあったんだろう」
「だいじょうぶです、なにもないです」
いっそここから逃げたい。
そう思ったのが通じたのか、先生は僕の腕をとった。
「最近部活にも出ていないんだな。顧問も心配してたぞ」
チクリと胸が痛む。大柄な体に見合う大きな器の山田先生は噂が流布したあとも時々部に来るように声をかけてくれたから。
あそこにいけないのは、僕の意気地なしのせいだ。
「それは…」
「怪我でもしたか」
その「怪我」がなにを揶揄しているか分かってカッと顔が赤くなる。いくら噂であーだこーだ言われていても、生々しいことを認める気は無かった。
「正直、お前が元彼を寝取ったとは思ってねえよ。そんな図太い奴がここまで弱るとは思わない」
「…弱ってません」
「弱ってるだろ?食事も取れねえ休めもしねえ。……なぁ、無理に聞く気はないから少し緊張緩めとけ」
これ以上話を聞きたくなくて、下を向いていると先生に顎を持ち上げられた。
瞬間、先生の顔があの日の健斗とかぶる。
「ひっ」
空気を鋭く飲み込んだ音がして、頭が真っ白になる。
「…どうした?」
蛍光灯。
上から見下ろす男の目線。
掴まれた腕、圧倒的な力の差。
助けてくれる人なんて、いない。
「やだ…やだっ!」
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