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むりしないでいいよ
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side:英人
「あっ…やだっ!!」
無意識か目を合わせようとしないアキの顎をクイと持ち上げると、一気にアキの様子が変わった。
悲鳴のような声をあげて俺から離れようとする。パニックを起こしているのは一目瞭然だった。
「やだ…やだ…」
細い声でうわごとのように呟き続けるアキに危機感が芽生える。
どうしてアキはパニックになったのか?
それと同時に、先ほど自分が尋ねた噂のことが頭をよぎる。こんなにパニックになるようで、寝取るなんて真似やはりうそだろう。
「悪かった。大丈夫だ。ゆっくり息を吸って…」
「やっ!やだ…けんと…」
消え入りそうな声だったが、呼んだのは間違いなく健斗だろう。だが、それが健斗に助けを求めているのか健斗に「いやだ」と言っているのかまでは分からない。
背中をさすりながら数をかぞえて呼吸を整えさせる。アキは手を真っ白になる程握っていた。
なん分経っただろう。少しずつパニックから醒めてきたアキは、深い呼吸を繰り返しながら生理的な涙をぽろぽろとこぼした。
「おちついた?嫌なことしてごめんな」
また無闇に触れてはいけないだろうと頭を撫でてやりたくなるのをぐっとこらえる。
「手、ひらいたほうがいい。握りしめてたから少し傷になってる」
パニックになると人は力の加減が難しい。
中々こわばった手は開かなかったが、ゆっくりと一本ずつ開けるようにして広げるとやはりくっきりと爪の痕が残っていた。
アキはその手を見て目を彷徨わせる。
「ごめんなさい…迷惑っ」
「だから迷惑じゃないって言ってるだろ」
「でも、僕…」
「ああ、いいよ無理に言わなくていい。もう少し時間をかけて、言いたくなったら話してくれればいい」
アキは申し訳なさそうな顔でこちらを見ている。…涙で潤んだままの目はかなりの武器だと思うが。
「暫くは俺の部屋に寝泊まりしなさい。これは養護教諭としての指示だから従うように」
「……はい」
ようやく素直に頷いたアキの頭を撫でて、それからしまったと思って顔を見るが、アキは気にしていないようだった。…さっきのがダメだった理由はなんだ?
アキに風呂へ行くように促して、一人になった部屋で俺はさっきのことを思いふけった。
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