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風呂2
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side:英人
アキが風呂へ向かったのを見届けてパソコンを開く。チャットツールをクリックすれば、既にスタンバイしていた人たちの声が聞こえてくる。
「おまたせ」
『おー、きたきた』
『どうだった?会えた?』
それは山田と姉の真奈美だ。この二人が同じ大学にいた知り合い同士だったと知った時は驚いたものだ。
『さっきはや……真奈美から聞いたんだけど、小学校のとき真奈美の学校にいたらしいな』
姉なりの個人情報保護だろうか。山田には伝えてなかったらしい。
この二人に時間を取ってもらったのは他でもない。アキのことだ。
アキの寝ている間に二人に頼み、こうして待っててもらった。
『それで弟くん……秋くんは今は?』
「風呂入ってる」
『さっきライン見ましたけど本当にあの体育倉庫に泊まってたんですか』
「ああ、荷物とかはこっちの部屋持ってきてるし戻す気はさらさらないんだがな…アキがかなり不安定で」
その言葉に二人とも沈黙する。
『…あいつ、何か言ってました?部活で何かあったとか……あのうわさのこと、とか…』
「いや、部活については特に。噂について聞こうとしたらちょっとパニックに近くなったから聞くのは一旦やめてる。本人は大丈夫って繰り返してたけどな」
先ほどのアキの姿を思い浮かべる。
彼の口から「大丈夫」と言われると、それはまるで「もうだめなんです」と助けを求めているように聞こえたのは自分だけだろうか。
白樺が違和感を覚えて訴えたから過敏にその反応を見つけられるだけかもしれない。それでも、あの痛々しさは放って置けない。
『兄の方と何かあったのは間違いないんですかね?』
大きな体には見合わない心細そうな声が山田から漏れる。本気で心配しているのだろう。とくに、部活の生徒として少なからず近しい立場にいたはずだから。
「多分な。部屋には絶対に帰りたくないみたいだ」
『…英人あんたどうするの?』
「んー校長には明日直接話を通すが暫くは教師預かりってことで俺の部屋に寝泊まりさせる」
一応は複数人でシェアする前提の寮の部屋だ。現状ベッドも1つしかないし課題はあるがなんとかなる。
そう答えると、真奈美は一度押し黙ってからまた話し始めた。
『ならいいけど…でも気をつけてほしい』
「あ?」
『多分、英人の方が分かってるだろうけど学校の噂って馬鹿にならないから』
それは暗に、うわさ同然のことがあったのは確定的だと言っている。
『前に話したこと以来、卒業まで注意して見てたのよ?でもアキくんはお兄ちゃんのそばにずっといた。たまにからかわれたりしても身を呈して守ってた』
「あーうん、それは思う」
『なのに、うわさ1つでそこまで拒否反応示してるんでしょ?彼氏がとられた時は何も言わなかったのに』
拒否反応を示すまで…
最悪の想定が頭をよぎった。ナニがあったのか。それでも、憶測で突っ込んでいってはいけないから余計に気を使う。
どうしたものか、と思った時に先ほどのことを思い出した。あごをすくったときに見せた反応。
それを伝えようと口を開いた時、風呂場から大きな音がした。
「…わるい、一旦抜けるな」
まあきっとボトルかなにかを落としたんだろう。
そう思いつつも様子が気になって一度ヘッドフォンを机に置く。
そしてその虫の予感が正しかったことを数十秒後に知ることとなった。
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