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嫌い
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1時間目の瀬野先生は古典の先生。事なかれ主義だと公言している。僕から距離をとっているのはあからさまに分かるもののやりやすい先生だった。
でも、2時間目が始まると同時に嫌味のパレードが始まる。
「おい、白樺なんだこれ」
「え…」
「(2)と(5)の答え見当違いにもほどがある!どうせそこの篠原とオタノシミで適当にやったんだろ」
蔑んだ目で、有紀を侮辱することで僕に攻撃する。わざわざ宿題のプリントから探し出してまでやることだろうか。
「オタノシミって…どういうやつですか?単純に僕が間違えたんです。あ、解説して下さるんですか?わざわざ僕のやつ探し出してまで!愛だな〜愛されちゃってる」
有紀がとぼけたように言うとクラスで小さな笑いが漏れた。先生は不快そうに顔を歪める。
「ハッ、お前は解説してもわからないだろう。お前の仲良しな篠原に教えてもらえ」
「えーー職務放棄宣言ですか!」
不満そうな声を出す。
僕は有紀が前に出て攻撃から守ってくれるのに、黙って俯いて嵐が過ぎるのを待つだけだった。
先生は対象を有紀にしていては遅々として進まないことを分かったのか僕の方を見た。
「おい、なに下を向いてる?やましいことでもあるのか?」
「いえ…別に」
おどおどと顔を上げると、先生はいいことを思いついたと言うように口角を上げた。
「本当か?携帯でもいじってたら大問題だぞ」
「使ってませんから」
「ほう。なら机の中と鞄の中を見るぞ?」
「…数学と関係なさすぎじゃん」
有紀がポツリと呟く。
先生はそんな有紀を睨んだ。
「最近風紀が乱れていてなぁ。風紀の顧問としては授業を妨害される前に風紀を正す義務があるんだよ」
机の上に広げたノートを見る。まだ定期試験の範囲も終わっていないのに、先生はこうやって気に入らないものを排除しようと頑張る。
後ろからクラスメイトに背中を突かれる。
「なあ、早く見せろよ。授業進まねえじゃん」
そりゃ、ターゲットにされてない人たちからすれば僕が早くしないと迷惑なだけだよね。
さっさと因縁つけられるの終わらせよう。そう思って机の中身を全部取り出す。
次に鞄の中を取り出そうとしてはたと手を止めた。あ、着替えとか詰まってるじゃん。
先生は手を止めた僕をにやにやと見た。
「なんだ?人に見せられないようなものでも入れているのか?」
「……いえ」
「ならさっさとしなさい!授業が進められないだろう」
「……はい」
仕方ないので鞄を持ち上げると、それを先生が手から奪う。あ、と思った瞬間には鞄のチャックを開けて先生はそれを逆さまにした。
ガサッと落ちたビニール袋には服や教科書が詰められている。クラスの中がざわついたのがわかる。
「なんだ?これは」
先生もちょっと予想外だったのか眉根を寄せた。僕はうつむく。
「これが授業に関係あるのか?」
ビニール袋をかざされる。中からは下着も覗いていて妙に恥ずかしい気持ちになる。
「これは没収だな」
バカにしたような声に慌てて目を向けると、先生は心から僕を蔑んだ目で見ていた。
「学校で下着ごと変えなきゃいけないようなことがあるんだろう?やはりおまえは噂通りなんだな」
濡れ衣じゃないか。
そう思うのに、ビニール袋を持ってくる選択をしたのが自分自身だからなにも言えない。
先生はそれに満足したようでビニール袋をこれ見よがしに教卓の上に置いた。
そして、何事もなかったかのように授業を進め始める。でも、教室中の視線は僕に集まっているのはわかった。
僕は、なにも言えないでずっと下を向いて唇を噛み締めていた。
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