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嫌い3
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あれからもう何時間も経った気がする。それくらい体力は消耗しているのに、ようやくこの数学の授業が終わっただけだ。
これからまだ4時限分あるなんて…
一瞬ムリ、と思ったけど保健室にも行きたくないし戻る場所もない。体育倉庫に行こうか、と思ったが昨日の今日であそこは無理だろう。
「篠原、意地張らないで保健室いけ」
三葉が声をかけてくる。
別に意地を張ってるわけではないのだ。行く場所もないからここにいるだけ。
そこそこ鍛えていたはずの男子高生だ。回復力だってそれなりだと思う。
「アキ、顔色悪いよ?」
心配そうに顔を覗き込んでくる有紀に少しだけ罪悪感を覚える。だけど、大丈夫だから!とごまかす。
保健室は、好きじゃない。
昨日は唖然としてたこともあって行ったけど、小学生の頃お母さんに怒られて以来保健室は行きたくない場所ナンバー1だった。
それに、保健室には兄さんがいるかもしれない。ショックや天候によって体調を崩しやすいから…。薄情な弟だけど、保健室に兄さんがいるなら会いたくない。
貝みたいにだんまりを決め込むと、有紀がため息をついたのが頭に響いた。
「もう、アキ知らない!」
その声は教室中に響いたらしい。
教室の喧騒が遠くなったのは、僕がショックを受けているのかそれとも本当に静かになったのか。
おそるおそる様子を見たら、有紀は怒った顔をこちらに向けた。
人を怒らせるのはあまり経験がないから、どうしたらいいのかわからない。
有紀はふいっと顔を僕から背けるといきなり教室を出て行ってしまった。
「ゆ、ゆうき…」
小さく呼んでみたけど当然返事はない。
有紀を怒らせてしまって申し訳ない気持ちと、そこまでしなくていいのにという気持ちがぐるぐるする。
色んな人に嫌な思いさせてばっかりだな、と思ったら朝の失敗が頭の中に浮かんでくる。
胃の中がぐるぐるする感覚がして、僕は前のめりになってその衝動を押さえ込んだ。
「だから無理するなって言っただろ」
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