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微睡み
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熱のあるときは幻覚を見やすいと思う。
兄さんは、熱のあるときには決まって出てくるキャラクターがいると言っていた。そして、熱で苦しむ自分を励まして愉快な騒ぎを起こして楽しませてくれると。
ぼんやりと保健室の天井を見ながらまどろんでいた僕の前に現れたのは、酷く怒った顔をしたおもちゃの兵隊だった。絵本で見たことのある、黒帽子に赤い兵服を着て銃を担いだ髭を生やした兵。
『おい、お前』
僕にその銃を向けてくる。
『お前は王の命令に背いたから処刑されるのだ』
どんな命令?
『口答えは許さんぞ!王の命令と言ったら王の命令なんだ!守ることも忘れて傷つけた愚か者めが!』
怒った兵の顔は真っ赤に膨らんでどんどん大きくなっていく。僕にどんどん近づいてくる。
その大きな顔なら僕なんてひと呑みだね。
『貴様が大丈夫だから王は安心していたと言うのに!信用を裏切った!』
王とは、父さんのことだろうか。母さんは王女?妃?
責められているのは分かるのに、微睡みの中だからぼんやりとしか思考が働かない。
『ええい、反省の色も見せぬならばもういい!すぐにでも処してやる!』
真っ赤な顔をして癇癪を起こした兵が銃口を僕に向け、引き金に指をかけた。
あ、処刑されちゃう。
でもこのゆらゆらとした微睡みの中でならばそれも痛くない気がした。行くあてもないんだし、いいか。
そっと目を瞑って、その瞬間を待った。そしてそのまま意識は遠のいていった。
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