アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
なまえ2
-
Side:アキ
「秋(アキ)」
その呼ばれ方はどうしても好きになれなかった。
幼いころは、アキ、あっくん、そういわれるのが好きだった。呼ばれた方を見れば、誰かが笑いかけてくれることも多いから。
小学校に入った時、自分の名前の由来を親に聞いてくるという宿題が出た。
『ねえ、僕はなんで秋って名前なの?』
二人は顔を見合わせていた。
『秋は、10月に生まれたからね』
そう言って頭をなでられた。
だったら、どうして兄さんは元、と名付けられたのかわからない。
『おにいちゃんは、どうしてはじめなの?』
『はじめの漢字は元気の「げん」よ。ずっと健康にって…』
お母さんは困った顔をしていた。そこでたずねることをやめた。
妹の名前も、弟の名前も祈りを込めて大切につけた名前。
どうしようかなぁと楽しそうに名前を考えていた家族の姿を見ているから、別に悲しくはない。それなのに、自分の名前を呼ばれるたびにその響きが軽いものに聞こえてしまう。
秋晴れのように明るい子、とか。運動のできる子、とか。
伝えることの苦手な両親だから、本当はそんな意味も込めてくれていたのかもしれない。だけど、どうしてもあの時のさみしさが抜けない。
「シュウ」
先生が僕をそう呼んだ時、胸がぎゅうっとなった。
特別な意味は特にないと思う。だけど、その響きがうれしい。
どうしても行きたくなかったはずなのに、すこしだけなら着いていってもいいかな、なんてほだされてしまう自分はどこまで単純なんだろう。
熱のせいだ。
そう自分に言い聞かせる。そっと先生の持つカバンに触れれば先生は少し驚いた顔をしたけどふわっと笑ってくれた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
45 / 155