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「アキー!おはよー!」
有紀がニコニコしながら駆けてくる。
「あ、おはよ」
「昨日送ったやつ帰りに取りに来てね?」
「うん…昨日、ごめんね」
有紀がキョトンとした顔をしてこちらを見る。
それからすぐに笑顔に戻る。
「なにがー?」
「昨日、様子見に来てくれたんでしょ?」
「うん!でも寝てたから帰った。アキの寝顔見たから午後超元気だったよー」
寝顔まで見られていたのか…相当な間抜けな顔を見せている気がする。改めて言われるとすごく恥ずかしい。
「そ、そういえばあの服どうしたの?」
「あれね、お兄ちゃんのやつ!お兄ちゃん背でっかいからさー、僕もあれくらい大きくなると思うんだよねー」
手を自分の頭の上にかざして身長を表現する。時々有紀から聞くお兄さんはかなり有紀に甘いらしい。だからその…ちょっと無茶な目標にも何も言わずに貸してあげたんだろう。
「有紀のお兄さん体大きいんだね」
「うん!アキよりおっきい!」
「確かにちょっと僕にもぶかぶかになりそう」
そこまで言ったところではたと有紀の動きが止まった。
「あれ?アキ、昨日は大丈夫だったの?」
「あ…うん、大丈夫…」
昨日先生から借りた服はやはり大きかった。彼シャツ、というほどのものではないけど。
服から、自分のものとは違う香りがしてなんとなく気恥ずかしくなったことまで思い出してしまう。
有紀はにこにことしていた。
「よかったー!先生に借りたんだね!」
「うん……って、なんでそれ…」
びっくりして有紀を見ると、有紀はちょっと困った顔をした。
「え?だって昨日先生言ってたし…そうじゃなきゃ僕の部屋に泊まらせてるよ?」
まさか先生が他の生徒にも伝えてるとは思わなかった。
有紀はむっと顔をしかめてこちらを見た。
「僕、アキのこと好きなのに……家出してる理由は聞かないけど!してるって知ったらうちに来なさいって言うよ!僕そんなに薄情じゃないんだからねー!」
「ご、ごめん…」
確かに失礼なことを言ってしまった。
しゅんとなるとすぐに有紀はニコッとしてくれる。
「ううん!早く学校いこー!あ、先生のところ飽きたら次はうち来てね?」
「……それは大丈夫」
さすがに違反に巻き込むわけにも…って今更かな?
それでも朝からふっと気が軽くなった。にこにこと腕を引っ張る有紀に従うようにして、学校へと向かっていった。
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