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弁当2
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「は?早川先生の弁当ですか?」
真田先生がぽかんとしている。
「ええ、昨日彼が体調不良だったものですから養護教諭が容態をすぐに見られるように私の部屋に泊まらせましてね。学食も悪くないですが病み上がりなので私が自分の分ついでにそれなりのものを作ろうかと」
いけしゃあしゃあと答える先生。
確かに、朝断る僕をおしきるようにしてお弁当を渡された。他の人に作ってもらえるお弁当はなんとなく気恥ずかしいものを感じたけどうれしくて断り切れなかった。
「体調不良ですか」
「ええ、こないだの大雨で体調崩したようでね。季節の変わり目は体調も崩しやすいですし…真田先生もお体気を付けて」
やっぱり先生は人によってすごい態度が変わる。
どこか距離を感じさせる言葉遣いは、真田先生に反論を許そうとしない。
真田先生は状況にうまくついていけないようだけれど、有紀もぽかんとしている。なんとなく気まずくて何か言いたいんだけどうまく言葉がつなげない。
「ああ、ほらほらもうチャイム鳴るよ。荷物チェックなら私がすでにしましたし早く行きなさい」
ちらっとこちらに目配せをされて慌ててうなずく。
今度はまだ状況のつかめない有紀の手を引いていそいで校門をくぐった。
「早川先生すごいねー」
のんきに有紀は笑っていた。
「うん」
「お弁当作れるとかアキも早川先生も家事出来るのすごいなー僕もできるようになんないと」
たしか有紀の作る料理はかなり独特だったとは思う。僕もあまり上手というほどではないけど。
聞かれたくないことを聞かない有紀はやはり僕なんかよりもずっとできた人間だ。
あさから嫌な目に合わずに済んだことに胸をなでおろしながらそっと教室の扉を開いた。
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