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ともだち
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「アキ、ごめんね」
しょぼんとした顔で有紀が謝る。それが申し訳なくて、ぎゅっと抱きしめる。
有紀がしょぼんとすると、弟や妹を悲しませている罪悪感を覚えて困る。
「ううん…」
「アキが、お兄さんのこと大事なのわかってるのに、あんなこと言っちゃった」
「大丈夫、有紀ありがとう。こっちこそ、兄弟のことに巻き込んだりしてごめんね」
そして、有紀を傷つけているにもかかわらず兄さんが来てくれたことに喜びを感じてしまっていることにも。
兄弟なんて思わない。その言葉は深く突き刺さっている。
それでも、つい先ほどまで彼は僕の兄としてここに来たんだ。あの日、僕に怒りながらも、彼は僕を弟として認めていたんだとおもうとどこか喜びが沸き上がる。
「アキ、泣きそうな顔してる」
有紀のほうがよっぽど泣きそうな顔してるのにそう言って頭をなでられる。ちがう。僕は兄さんが僕を迎えに来たことがうれしかった。泣きそうになってるのはそのせいだ。
「大丈夫だよ」
「アキの大丈夫はもう信じてないからいいのー」
「なにそれ」
ぐいぐいと頭を押し付けられてちょっと有紀かわいい。
よしよし、と撫でながら自分や早川先生とはまた違った雰囲気の部屋を見る。おんなじつくりなのに人によって全然違うなあ。
「あれ、有紀って一人部屋だっけ?」
「うん!前は同室いたけどその人留年組で退学しちゃった」
そういえばそんな人もいたっけ。留年するとあんまり来なくなる人もいるし年上ということでちょっと近寄りにくいこともあるのでもうよく覚えていない。
「アキ、この部屋移る?」
「…たぶん、真田先生が許可くれないよ」
同室の解消にはいくつかの条件がある。兄弟げんかはその理由としては認められないと思う。それに、先生方の半数以上の承認と生活指導、風紀、教頭、校長の許可がいる。
「うわーそうだった。あの先生めんどうくさいなー」
本当に嫌そうな顔をされて笑ってしまう。
「でもね、本当に無理だったらこの部屋おいで?アキには悪いんだけどさっきみたいに感情に任せて兄弟じゃないとか言ってるうちはあの人には任せたくない」
真面目な顔をされる。
本当に僕を心配してくれる人。
本当に頼るかはわからないけれどその言葉にそっとうなずいた。
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