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家族
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ツー、ツーと無機質な音を鳴らすだけになった子機。下ろすこともできなくてただじっとその音を聞いている。
「シュウ」
ビクッとなっておもわず手から落ちたそれを、先生がキャッチしてくれる。
「あ…すみません」
「いや…それより、お前何言われた?」
目を合わせるのが怖くてうつむく。
先生の服をつかんだ手はまだ固まったようにずっと先生を引き留めている。
「シュウ、何言われたんだ」
少し語気の強まった先生に驚いて、少し後ろに下がる。
ぎこちなく固まった手を動かそうとすれば、逆にその手をつかまれる。
「…べつに、大丈夫です」
「何が大丈夫なの?教えてよ」
「…ただ、兄さんと喧嘩したから…ほ、他の部屋にいるって言っただけです」
それは間違ってない。
母さんと話しているときよりもさらに震えそうになる声が忌々しい。
「それで?」
「そ、そしたらしばらくは頭を冷やせって…今、実家で会ったりするのも避けるべきだからってことになっただけです」
「…実家に、帰ってくるなと言われたってこと?」
「もともと帰省しない人もいるでしょう?いいじゃないですか、先生がご実家に戻られる間は他の、それこそ有紀のところとかに行きますから」
おこらないでほしい。
先生の口から、「帰ってくるなと言われた」なんて聞きたくなかったのに。
かたくなに目を合わせようとしない僕に、先生は苛立ったようだった。
「シュウ、こっちを見なさい」
「やです」
「シュウ」
「ごめんなさい、僕…」
「シュウ!」
食いしばった下唇から、涙のような血が一筋伝った。
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