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嫉妬?4
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「恋なんて人それぞれだ」
答える言葉が妙に薄っぺらくて嫌になる。
それでも、そう言わずにはいられなかった。
「多分、俺の恋の仕方とシュウの恋の仕方は違う。それはずるいんじゃない。」
「でも、僕は健斗に恋をしたと錯覚して重くのしかかった。その結果がこれですから」
自嘲するような口調で呟かれる。
恋なんてそもそも錯覚だろう。
それに真摯に向き合おうとするだけ偉いのに。
些細なきっかけで沈んでいく秋に嫉妬で八つ当たりすべきでは無かった。
「沢本に、この話は?」
話の方向を変えようと声をかけると秋はきょとんとした。
「沢本…先生ってあの先生ですか?」
「…うん」
「話してないです。なんか…その、不思議な先生だった」
まあそれはその通りなんだけど。
「話にくかった?」
「いえ…面白い方だと思いました。先生相手に失礼ですよね」
多分、話の方向を変えようとしていることに秋も気づいて乗ってきているんだろうな。
「もし話しやすければたまに小等部に顔を出してごらん」
「え…」
「沢本があんなに冗談言ってたってことはシュウのこと気に入ったみたいだし、少し遠いくらいの人の方が愚痴りやすいこともあるよ」
「…愚痴なんて……」
ふっと笑った秋に安堵する。
勝手な欲求で嫉妬をしてしまい申し訳なかったが、よく考えれば話せる相手が増えるのは良いことだ。
秋は口に出さないが、最近妙に秋に絡んでいる生徒がいることは知っている。人の噂も七十五日とは言ったが、あからさまに秋を嫌う素振りを見せる連中のせいでむしろヘイトが溜まっているように思えた。
秋がこの笑顔を見せられる相手が少しでも増えればいい。
そう、心から思う。
それでも、心の中に沈んだあの嫉妬は完全には消えずにこちらを見ているのも分かってる。
嫉妬の意味を考えることは放棄して、秋の頭を撫でた。
「せ、先生やめてください」
少し恥ずかしそうに笑う秋。
そう、この笑顔がずっと続けばいい。
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