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side:英人
「シュウ?」
「あ…はい」
弾かれたように顔を上げてこちらを見た秋は、どこか疲れて見える。原因はなんと無く察していた。
『あいつ、ついにあの赤城のオンナになったんだってな』
『わざわざアレが昼休みにクラスに来たんだってよ』
『見せつけてんだろ』
そんな噂はあっという間に校内を駆け巡った。
人間は弱い。自分と違うカテゴリの人間を見ると排除しようとする。
人間は言い訳が好きだ。
不良というレッテルは、排除するには格好の言い訳だろう。
「最近学校楽しい?」
「…はい」
複雑そうな顔。
赤城は煙たがられる存在ではあるが悪いやつではないと思う。だから秋に友人ができること自体は歓迎してるつもりだ。
それでも、日に日に大きくなる噂に心がすり減っていないわけがない。
「シュウ、無理しちゃだめだよ」
頭を撫でると、秋は困った顔をした。
学校内で、俺がしてやれることは想像以上に少なかった。
学生には学生の社会がある。そこで起きる理不尽は、大人が介入すべきものもあれば介入することで完全に壊されて取り戻せなくなるものもある。
嫌な思いをすればそれはいじめだ。
だが、噂に聞く限りの行為では「思春期男子の猥談」であったり「おふざけ」と言い訳が立つ。それが通用するか否かでは無く、言い訳をしかねない状況で間に入ればむしろ立場は悪化する。
もう少し見守ろう。
そう心に決めて、また宿題に向かいはじめた秋の横顔を眺める。
家族や健斗のこともそろそろ此方からも動きたいところだが、今は仲間を増やして土台を安定させるべきだ。
そうやって呑気なことを思っていた。
後悔先に立たず、という言葉の意味も忘れて。
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