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ひとごと3
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それから10分近く。
いろいろなことを話した。
健斗と付き合ってたこと、別れて健斗と兄さんが付き合いはじめたこと。
未練があって、距離を置いたこと。
健斗に抱かれてしまったあの日のことはぼかして、兄さんと距離が生まれたことも伝えた。それからはほとんど会話もないこと、噂が巡って少しずつ周りに不穏な空気がでにたことも。
「…早川先生と暮らしているんだよね」
「……はい」
家出?をした僕を部屋に泊めてくれるようになったことも話した。
赤城は絡まれてるところを割って入ってくれて、そこから仲良くなったことも。赤城は悪い子じゃないです、と言ったら先生たちは笑ってた。
「知ってるよ、赤城くん問題起こしてないからね」
「あいつなんであんな不良な見た目選んでるのかわからないが…」
思ってたより、この先生たちは人を見た目では判断してない。それが嬉しかった。
「……それで、放っておけば…大丈夫だと…」
所々つっかえながらも久しぶりに長い時間話した。
先生たちはメモを取ることもなく、ただ頷きながら話を聞いてくれた。
兄さんに嫌われたこととか、母さんに見放されたこととか、抱かれてしまった裏切りを言うことはできなかったけれど。すこし、心が軽くなる。
「話してくれてありがとう」
優しく微笑まれて、体の力が抜ける。
思っていたよりも体はこわばっていたらしい。
「秋くん、君が傷ついたことが私たちはとても悲しい」
「…傷ついては」
「早川先生がね、すごく心配してた」
その言葉におどろいた。早川先生は、心配とか不安を誰かに漏らすタイプには見えなかったから。
「近すぎて言えないこともあれば、近くにいたいから知られたくないこともあるだろう」
哲学的な言い方がよく分からなくて校長先生をみると、先生はにこっとした。
「言いたくなったら言えばいい
分かりたくなったら分かろうとすればいい。
時間は君には溢れてる。
今は言わなくていいよ」
時折、有紀たちが掛けてくるのと同じことなのに、いつもよりもその言葉は胸に沁みた。
ぼんやりと、早川先生の顔が頭に浮かんだ。
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