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歪
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side:英人
秋が消えた。
白樺は焦った顔をして保健室に飛び込んできた。その顔に、ぞっとする想像をしてしまい慌てて保健室を出た。
向かうのは、彼のところ。
「おい」
「うわ…暴力教師が何の用です」
不機嫌に睨みつけてくるのは、聖川健斗。
まだ顔には腫れが残っていた。
「篠原秋の居場所を知ってるか」
「…知りません。元のところ行かなきゃいけないから…」
ふいと顔を背けた顔に確信した。
こいつは秋の場所を知っている。
それは、同時に考えうる最悪の事態が起きている可能性を示唆していた。
「俺が殴らないうちに答えろ」
「また暴力ですか?
そもそも担任でもないのになんで……ああ、ソウイウ関係なんですか?」
罵るように笑われる。
怒りは溜まるのに、妙に頭は冷静だった。
「お前は、人を殺したいのか」
自分でも不気味なほどに優しい声になった。
健斗の顔が歪む。
「はあ?」
「秋は、死ぬぞ。
そういう奴だって、俺よりも付き合いの長いはずのお前がなぜ分からなかった」
「死ぬわけないでしょ…だって……」
「恋は盲目?兄を襲うように指示すると、本気で思ってんのか」
「…だって、襲った人たち、そう言ったって…」
「ああ、そうか」
主犯じゃなければ、罪は軽くなると思ったんだろう。秋は、嫌われてしまっていたから。
ここに秋がいなかったことは幸いだった。
「分からないならもういいよ。
もういい。分からなくていい。
お前を好きになったのは人間だけど、お前が付き合ってたのは人形だったんだよな」
おしえて、さとしてただしいみちに。
悪いけど、今はそんなことしてやれる大人じゃない。
時間が惜しくて、もはや用済みの健斗に背を向けた。
睨まれているのはわかってたけれど、もうどうでもいい。はやく、秋を抱きしめなければ。
「なんでっ!!だって、おれ、元がきずついて、それは秋が…」
「だから、それでいいってば。
もうもどれないね」
秋も、俺も、そしてお前たちも。
…君の心に整理がつくまでは、なんて悠長なこと言ってられない俺を許してくれ。
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