アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
愛を知らぬ子 弐
-
「助、け__」
「しっかりしろ!おい!」
声をかけたのは一人の少年だった__、それも、彼と同じくらいの。
見るからに高級そうな黒いコートを着ていて、傘を彼を守るかのように傾けていた。
否、実際に守ったのだ。
それには沢山の雪が__通常ではありえないほど大きな雪の塊が__乗っていて、傾斜と重みですぐにボトボトと落ちていく。
そう、少年は、彼を殺そうとしたその塊を、すべて傘で受け止めたのだ。
それを見て、通行人の一部が立ち止まった。
そこには先ほどの女子高生たちもいて、「何あれ~、キショくない?」「キモイやつ助けてる~、アップしよ~」などと言いながら携帯を取り出している。
__野次馬してぇだけかよ。
少年は人々をまじまじと見つめ、そして睨んだ。
それには少年とは思えないほどの重みがあり、同時に蹴散らすような威力があった。
「な、なんなのよあいつ等」「いこいこ」なんて女子高生は夜の街を早足で歩いていく。
「ったく、助けねぇのに悪口ばっかたたいてんじゃねぇよ」
少年は舌打ちして、女子高生の背中に向かってそういった。
この少年のどこに、世間の壁を破る非常識な力があるというのだろうか。
まさに、本当の強さというものがそこにはあった。
「立てるか?」
少年は傘を肩に掛け、手を差し伸べるが、それは彼にはわからない。
「い、うあ」
遠く聞こえる知らない少年の声に、返事をしようとしたものの、それはまたもや言葉にはなってくれなかった。
「ほら、手」
少年は彼の手を取るが、一瞬それを離しかけた。
彼の手は、あまりにも冷たすぎた。
まるで死人のようで、氷を触るような感覚に、少年は顔をしかめた。
しかし、少年はその手を強く握りしめる。
少年の温度で、少しずつ彼の手は暖かくなってきていた。。
__あったか、い?
彼の心に少しずつ希望が宿っていく。
__死んで、ない?
そして彼の雪に埋もれた足にも手を伸ばすが、彼の手以上の冷たさにぱっと離してしまった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
3 / 139