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帰宅したい 漆
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「ね、ねぇ、もーさ、ほんと教えて・・・」
奏は泣きそうな声でいうが、坂口は相変わらず笑っているだけだ。
大通りを抜けたあと、人気の無い狭い路地に入り込み、そのまま車に揺られるだけ。
ずっと何処にいくかわからないという緊張感を持ち続けるよりは、せめてもの気休めをとった方がマシだと思い、先ほど同様に空を眺めていた。
「奏ももうそろそろわかってくるはずだよ!」
坂口は楽しそうにそう言うが、奏は一つも楽しくない。
寧ろこれから監禁されにでも行くような恐怖心しかない。
__ほんとどーするつもりなんだよ・・・。
車のナビを見ると、会社と自宅(?)のある場所は反対方向で、もう10kmは離れているであろう距離にあった。
そして、これから向かう先の目的地にはピンが指してあり、『近藤さん宅』と入力してあった。
奏はいままでの記憶を巡らすが、近藤などという人とあった覚えは無いし、そもそも車なんてそんなに乗らないからこんな所までは一回も来たことが無い。
知り合いを思い出すが、マスターや望月葵くらいしか思い浮かばない。
マスターは名前誰も知らないから、その可能性も少なからずあったものの、生憎彼のマイホームはバーのすぐ近くだったので、やはり違うようだ。
__ほんとに誰、近藤さんって。
「ふふーん、わかんなくて困ってる奏にヒーント!!
実はこの人、依頼主さんなんだよねぇ」
「猫の飼い主か!?」
なるほど、ついでに届けておくというのか、猫の骸を。
だが、誰だかわからないような猫を見たら、きっとその状況を飲み込め無いだろう。
__悲しいよな、死んじゃって。
帰ってきた骸を抱き、泣きだしてしまう飼い主を想像すると、とても悲しい感情が写ってしまいそうになった。
「うん、これからこれだけでも届けられれば、死んじゃった猫の思いも報われるような気がするんだ。
もちろん猫の言葉なんて全然わからないけど、でも、近藤さんを思ってるような気がするんだよね」
改めて、坂口が慈愛のあるとてもいいやつだということをわからされた。
そして、話している間にももうすでにその近藤さんの家に到着していた。
近藤とかいてある石版が門に刻まれていたので、本人で間違いないようだ。
「奏、猫ちゃんのこと持ってきてくれない?」
「めちゃくちゃ重大だね」
車から降りながら、そう軽めに笑う話をした。
勿論、重大が1番大きくこころに残ったのだが。
坂口は夜中だというのに何のためらいもなくインターホンをおした。
ピーンポーンという音が少し長めに響いた。
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