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猫事件 弐
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呼ぶと、坂口はすぐに振り返ってくれた。
まずふわふわした天然パーマのかかった茶色と金色の髪が動き、そして次いで顔、全身がこちらを向く。
いつも見ているそれが美しく見えたのは、きっと先ほど助けてもらったせいで、吊り橋効果になっているせいだろう。
__きっとそうだ。
自分に言い聞かせるように思う。
__絶対にそうだ!!
そこにはどういった心情があったのか、奏本人にもわからなかった。
「ヘルプ」
坂口は奏のその一言を聞くと、すぐに近づいてきた。
そして奏のかおがいまだに青白いこと、そして足取りがおぼつかないことを瞬時に把握したらしい。
一瞬険しくなったその表情が、自分に向けられていることを、奏は嬉しく思っていた。
なぜだかはわからない、が。
そしてすぐに肩を貸してくれた。
まぁ、元々の目的は坂口に会うことだったのだが、いっそ連れていかれるなら楽な方がいいし、できれば車の近くに行きたかったので連れて行ってもらった。
「ありがと」
短くそういってから気づいたが、もう吐き気は収まってきていた。
__よかった。
だが、一つ気になることがあった。
その間に言葉が何一つなかったのだ。
なにせ二人は親友、言葉がないだなんてありえなかった。
奏を気遣ってそうしていたのかもしれないが、その行動はかえって奏を傷つけることとなってしまった。
「奏」
短く呼ばれ、てっきり先ほどの返事をすると奏は予想した。
__どういたしまして、かな?
「バーカ」
「え?」
思っていたこととは違かったで、奏は目を丸くしていた。
それは意外と無意識だったので、それにはあとで気づいた。
そして、頬をつねられた。
さほど痛くはなかったが、やめてもらいたかったので顔をしかめた。
案外早く坂口はやめてくれたので、本当にいいやつだとつくづく思った。
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