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猫事件 肆
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「あのさぁ」
奏は無心になって言う。
「そろそろ離してくんない?」
奏はまだ、坂口に強く抱きしめられたままだったのだ。
実際、坂口は鍛えているだけあって、腕力も奏にとっては凄まじいものだった。
それをかれこれ十数分。
奏はろくに運動もしていなかったせいもあり、なんとなくだが肉体的な限界を感じつつあった。
奏は結構ほっそりとした体形をしていて、あまり日中出歩かないせいもあり、その肌は人間にはまだ思えるがあまりにも白かった。
それに対し、坂口は健康的な体系、そして何より筋肉が鍛えられていた。
__坂口みたいには成りたくないけど、せめて筋肉はほしいよね。
坂口みたいに馬鹿には成りたくない。
けれど、やはりその筋肉にはなにも敵わないのだ。
そんなことをのんきに思っているうちに、奏の体がぎゅううとどんどん強く締め付けられていく。
余りの力に奏の声が出なくなる。
否、息ができなくなってしまった。
__息、息させろ脳筋バカっ!!
抱きしめられたとき、幸いにも坂口の肩の上に両手が出ていたので、奏はそれで思いっきり坂口をたたく。
途端に抱きしめる力が弱くなり、奏はやっと息が吸えるようになった。
更にその力が弱まっていったので、奏は坂口の体を突き飛ばすように離し、ハァハァと荒い息遣いで叫んだ。
「ったく、何すんだよッ!!」
荒い息遣いの奏に、坂口はようやくその状況に気が付いたらしい。
「ごめ、息出来てなかったの、気づかなくて」
坂口は呆気なく謝った。
奏はもっとこう、からんでくるのかと思っていたのだが、実際何もしてこなかった。
それは、ただ突き飛ばされてようやく立っているような体制で、顔だけを驚愕させ、何かを怖がっているようだった。
奏は、「大丈夫か?」だなんて問いかけようとしたが、奏をみては小さく体を震えさせる様を見ているうちに、それが自分に向けられているのではないか、と思ってしまった。
__何か傷つけることをしてしまったのか…?
こういう風にされると、奏はどうしてもペースを乱されてしまう。
__本当に、何かしたんじゃないのか…?
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