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御影が啼く 肆
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「御影、置いてきちゃダメでしょう?」
助けるわけでもなく、近藤がそういった。
一応悪臭が足音と共に離れていったため、奏は目を開けて安堵の息を吐いた。
猫はもう近藤の目の前にいた。
奏と目が合うと、猫は機械のようににゃあ、とまた鳴いた。
「ひっ」
小さく悲鳴を上げると、猫は目をそらした。
途端に金縛りが解け、倒れこむように地面にへたり込んだ。
ぶつかりそうになり、目をつむる。
__あぶないっ。
地面とぶつかる直前、暖かいものに支えられた。
それは坂口だった。
坂口が抱き寄せてくれて、奏は自然に膝枕をされるような形になる。
悪臭のせいでいつのまにか青白くなっていた肌に赤みが戻り、目にも希望という光が戻る。
「危ないよ、奏。
気を付けないと、きっとまた倒れちゃう」
坂口は少しくるくるとした奏の毛先を指ですくと、ぽんぽん、と軽く頭をたたいた。
奏は目の前に坂口の顔があったので、なんとなくキスされそうな気がして顔をそむけた。
近藤もそれを見ていた。
__あ、コンドーサン居たんだった…!!
こんなところを見られては、完全に誤解を招くだろう。
『あの二人実は__』みたいに言われたらそれこそ人生が終わりそうだ。
「さ、坂口、どいてっ!」
「そ、そんな無茶なっ!」
思いきり起き上がると、目の前にあった坂口の顔は、すんでのところでぶつかるのをよけていた。
__無茶だとか言っといて、結局よけられんじゃんか。
本当は身体能力だって高いし、鍛えてるだけあってやっぱり動きは俊敏だった。
奏はそのまま立ち上がると、坂口もよけた姿勢を戻しながら立ち上がった。
「い、今のは__」
「ええ、お二人さん、仲良しなんでしょう?」
奏が言い訳をしようとすると、近藤が言葉を紡ぐように言った。
実際そうなのだが、思っていた勘違いとは違っていたので、安堵の息が出た。
「まぁ、幼馴染なんです」
坂口がそれを紡いだ。
実際言っていることは嘘ではない。
しかし、なんとなくごまかしのために言っているため、罪悪感が募る。
「あらあら、本当に仲良しで」
__まぁ、いいのか?
一件落着か、とため息を漏らした奏は、気づかなかったのだ。
目の前の猫が、自分へ瞳を向けていることに。
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