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後悔は殻の中 弐
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「御影っ!!」
「っ!?」
しかし、現実が坂口だけに甘いわけではない。
現実は同じ量の辛さをもたらすのだ。
遊んでいるかのように、戯んでいるかのように。
奏が”元”に戻ったのは、切羽詰まった近藤の、親が子を守るような叫びをあげて、それが耳に入ったからだった。
__俺は今、何を__?
何をしようとしていた?
何をしていた?
記憶があいまいになり、分からなくなっていた。
理性を手放した、その事実にも気づいていない奏は、ある意味幼いのかもしれない。
ふと横を見ると、坂口が「奏っ」と呼び掛けていた。
「なんだ、戻ったんだな、よかった」
安堵の息を吐いた坂口とは裏腹に、奏の心は曇っていた。
しかし、何か考える前に、奏の思考は悪臭によって中断させられた。
出所は、真下。
そこにある、御影の頭だった。
初めて啼いた御影は、その親と同様に頭が胴体と分離していた。
しかし、その胴体は、すぐ近くに転がっている。
奏がけった親のそれが、どうやら首付近を直撃したらしく、頭と胴体の接合部だったところからは、絶え間なく鮮血があふれ出ていた。
その時初めて、奏は地震の犯したことを知った。
そして、それを深く深く後悔した。
崩れこみ、嗚咽が漏れる。
悲しい、悲しい、なぜさっきまでそれに気づかなかったのか、わからなかった。
「奏」
坂口の慰めようとする声が、奏の中に響く。
少し悲しげな瞳でこちらを見つめていた。
しかし、そんな些細なものでも__その曇りのなくなった瞳だけでも、奏を極致に追い詰めるのには十分すぎる材料だった。
__なんで、俺が__。
頭の中は疑問でいっぱいだったが、目の前には自分がやってしまったことを証明するものがあった。
自分がやった事実を、感情よりも先に受け入れなければならなかった。
__あんな輩と、同じことなんて。
殺すだなんて。
__今までやらないでいられたのだろうか__?
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