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後悔は殻の中 参
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生物を殺す__。
それ自体、いい言葉ではない。
しかし、奏にとっては普通の人以上に良くない言葉だった。
それが理性を失い、暴れていたという事実を受け止めきれない奏を、更に狂わせていく。
__俺はやっぱり、殺す生き物なんだ。
殺すのは、自分自身が生きるためのものではない。
生きるため以外の、遊び、戯れ、娯楽などのもの。
それだけがために罪なき生物を消すのだ。
自分を捨てた親__。
それはきっと自分を殺そうとしたのだろう。
死なせようとしたのだろう。
きっとそうに違いない、それ以外に理由なんて見当たらない。
そう自分の中で被害妄想を広げていった。
事実がないから、代わりとなるものが欲しいという、願望がそこにはあったのかもしれないが、奏自身、昔のことなので詳しくは思い出せなかった。
ただ、その自分の中の事実と化した、『自分は死ぬはずだった人間』ということが、奏をずっと縛っていた。
しかし、奏は縛られていることにずっと気づいていないのだ。
今でさえも。
だから、その自分の親と、それと同じことをする、しようとする人間が大嫌いだった。
自分の行ったことは罪深い、多分法律か何かで罰金を取られるような、そんなことををしたという事実。
奏を蝕んでいく被害妄想__。
「ごめん、なさい」
奏はそれしか言えなかった。
言いたくもない、事実をまだ受け止めきれてもいないというのに。
しかし、それが今の奏にできる、唯一のこの状況の脱出手段だった。
それを見つめる坂口の瞳が、許されないかもしれないよ、と問いかけているように感じた。
だが、奏は悲しげな眼で見つめ返すことしかできなかった。
瞳で答えることが、できなかった。
__別に、許されようだなんて思っていない。
そんなに自己中心的ではない。
それを坂口が知らないのが悲しかった。
__許されなくたって…、それが当たり前なのだから。
別に、仕方がないんだ。
許されないのだから。
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