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後悔は殻の中 肆
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別にいい答えをもらおうとなんて思っていなかった。
しかし、返ってきたのはあまりにも期待外れな言葉だった。
「いいえ」
そう、返ってきたのは、許しの言葉だった。
いつもの、近藤の声で__。
いつもの、ずっと明るい声で。
奏は、驚くことしかできなかった。
口を半分開き、目を開いて。
「生き物は皆、死んでしまうものなのよ?」
__そんなこと知ってる、なんでそんな当たり前のこと聞かされなくてはならないんだ、今のこんな状況で。
「だから、御影の最後だってここだったんだと思うの。
そういう風に、運命に初めから定められているのだから」
運命だとか、現実味のないことばかり言う。
ここまで近藤が狂っているのは、きっとそういうオカルト関連のものばかりだったからだろう。
半信半疑が、完全なる疑いと化した。
「私はね、生き物が死んでしまうのは嫌いなの。
でもね、それが定めっていうものなのよ。
だからね、仕方ないじゃない」
だが、そんなだったのに__。
この言葉は、奏の心に響いた。
その時初めて知ったのだ。
近藤には、怒りという感情が欠落しているということ。
いままで絶対、怒ったら怖いと思っていたのだが、ここまでくれば欠落以外に考えられる可能性はほとんどなかった。
__じゃあ、本当にこのひとは、俺を許してくれるのか?
奏の瞳からは、いつの間にか涙がこぼれていた。
大粒の涙が、頬を伝っていく。
なぜか、ということははっきりとはわからなかったものの、うっすらと奏には分かっていたのかもしれない。
声をも発せぬまま、それを呆然と見つめる奏。
それとは裏腹に、坂口はとてつもない恐怖と怒り、嫉妬を感じていたのだ。
__だって奏は俺のものなのに__。
いつも一緒にいたものを取られる気がした。
ずっと、害虫がつかないよう純粋を保っていたのに。
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