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坂口と奏 壱
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夕焼けに染まる、都会とは程遠いが、田舎とも言えない街並み。
電柱に泊まっていたカラスが、カァカァと鳴きながら山の方向へ飛んでいく。
と、いっても、東以外の方角をすべて山に囲まれているため、どういう方向か詳しくはわからない。
唯一山がない東は、海が残面に広がっている。
しかし、綺麗とは程遠く、泳げるものの、海庭には泥のようなものが溜まっていて、泳ごうとすると撒きあがり、視界をふさぐようなところだった。
そんな、何の変哲もないただの街を、二人の少年が手をつなぎながら歩いていた。
年はどちらも小学6年生__11~12歳といったところだった。
片方の少年は、パーマをしているのか天然パーマなのか、髪の先がくるくると回っていた。
そして、長袖に薄いパーカーを着ていた。
もう一方の少年は、きっちりと決まった髪形をしていた。
そして、来ている服は、お坊ちゃまのような高級な服で、実際彼はそうだった。
彼は、ヤクザの跡取り息子だったのだから__。
この街は、何の変哲もない、わけでもなかった。
国に指定されたヤクザの本拠地がある、そんな街だった。
そうはいっても、構想や争いが絶えないという、物騒なところなわけでもない。
国に指定されてはいるものの、組長が平和主義だったため、抗争などはめったになく、あったとしても一般人を決して巻き込むことはなかった。
しかし、それでもヤクザの肩書きがあるため、街の住人からは少し避けられていた。
少年二人は道を歩く。
跡取り息子は道の端を歩きたかったが、住人たちが横に避けるので、自然と道の中央を堂々と歩く形になってしまう。
ヒソヒソと話をしながら、二人に冷たい視線を浴びせる。
そんなことをもろともせず、跡取り息子はもう一人の少年の手を引く。
その手のつなぎ方は、いわゆる恋人つなぎというものだったのだが、後継ぎ息子はそれに関して特に恥ずかしがったりもしなかった。
むしろ、それを周りに見せつけるように堂々としていたのだ。
一方、その隣の少年も、全く気にしていないようだった。
なにせ、跡取り息子は、なにもしらなかったその少年に、それが普通だと教え込んだのだから。
だから、これが二人にとっての普通だった。
跡取り息子の、独占欲にまみれた__。
二人が立ち止まったのは、とあるパン屋だった。
二人の行きつけの店で、今日もパンを買いに来ていたのだ。
「おばちゃん、カレーパン頂戴?」
「はいはい、まっててねー」
レジにいたおばさんに、一人の少年が言った。
跡取り息子はそれに同調するように首を縦に振った。
「カレーパン2個ねー」
おばさんはそういうと厨房に入っていった。
二人の少年の声には、幼さが混じるものの、確かに奏と坂口の声だった。
パーマの少年が奏、跡取り息子が坂口の__。
そう、これは、12年前の奏と坂口だった。
そして、これは、坂口の心の中、ずっと刻まれている記憶の中だった。
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