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坂口と奏 陸
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「そう、だね」
目から何か、熱いものが零れ落ちてしまったから、つないでいない方の袖で、それを乱暴に拭った。
そして、立ち止まった。
これが本当の小学生の会話なのかと、自分自身で驚くくらいだった。
それでも、自分よりも他人を優先してしまう奏に、どうしても坂口は甘えていた。
奏はきっと、坂口のさしている人に気が付いていないのかもしれない。
そうでなければ、こんなくだらなくて、それでも本人にとっては重苦しい質問なんかに、答えるわけがないのだから。
奏はきっと、自分が守ってきたからいまだ純粋なのだ。
「さ、坂口、どしたの__?」
__ほらね。
予想通りの反応。
心配そうに顔を覗き込む奏に、キスしてしまいたいくらいだ。
そして、愛してると伝えれば、少しはこの気持ちも軽くはなるのだろうか。
言い出そうとして、口を開いてから、やめた。
一回言い出そうとした言葉を、口を閉じて空気ごとの見込んで、腹の中にじくじくとため込ませる。
そして一言、「ありがとう」。
こんな関係でいられるのも、奏のおかげなんだから。
いつでも隣にいていい、親友にならせてくれて。
醜い闇を内に潜ませている自分を、隣に置かせてくれて。
「坂口、今日なんか変」
奏は前を向いた。
自分の顔を見ようとしなかった、それだけ悲しかったが。
「はは、そうかな?
__いつもだよ、いつも通り」
「ふーん__?」
奏は不思議そうにそういったが、また歩き出した。
奏にはその真意がわからないから。
__いつも通りっていうのは、本当にそのまんまの意味なのにね。
わかんないってところも可愛いけど、__やっぱり全部かわいいや。
いっつも、いっつも、俺は中では変な奴なんだよ、奏はわかんないだろうけどね。
奏しか欲しくないって思ってる、そんな馬鹿なやつなのにね。
いつか、俺を分かってほしいな。
二人の少年は、夕日の中に向かって歩く。
いつも間にか、忘れていたのだ。
二人はまだ、小学生だった。
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