アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
『愛』中心の人生 弐
-
「黒川さんも悪い奴、なのかな?」
黒川の隣に座ると、そこの空間だけが温かく感じられた。
まだ三月だ、少々の寒さは残っている。
しかも、客間は使わないからエアコンは取り外されていた。
「ねぇ、黒川さんは何を隠してるの、教えてくれない?」
それは単なる興味だった。
悪い奴なのは分かったが、その言葉の裏にはもっと深い何かが隠されているような気がしていた。
それに、黒川が奏にとるそっけない態度も、元からではないはずだ。
初めのころからずっと、自分に冷たく、厳しく接してくるそれが、不思議でならなかった。
「いっつもそっけないのはなんで?
俺を拒むのはなんで?
俺をいつ愛してくれるの?
俺には何が足りないの?
__教えてよ」
それは本望だった。
奏の中心は愛、愛してもらえることが何よりの喜びだった。
だから、黒川が自分を愛してくれないのは、自分に何かが足りないということなんだろうと考えた。
奏の歪んだ、自分を愛してほしいという気持ちは、日に日に強くなっていって、もう自分でも制御はしきれなくなっていた。
奏が愛されたいと願うのには、ただ一つ単純な理由がある。
自分を必要とする、自分なしでは生きていけないような人間が欲しい。
それは親に捨てられた自分から逃れるためだった。
親に捨てられたレッテルは、自分で張ったというのに、一生剥がせないほど強く纏わりついて、自分自身を縛っていく。
過去の自分と今の自分を重ねることで、どうにか今は幸せであるんだと実感することができた。
それでも、欲求と過去に対する同化したくないという恐怖が、奏を愛に縛らせていた。
「黒川さんはやっぱり坂口を愛しているの?」
__なんか、病んでるやつみたいだな。
それでも、やはり愛がほしい。
愛に縛られていることを知らずに、生きていながら。
「ああぁ、いつ頃愛してくれるんだろう、楽しみだな」
__なんか、まるでヤンデレだな。
それでも、やはり愛がほしかった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
69 / 139