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何も知らない奏 弐
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「ああ、そうそう、そんなことはどうでもいいとして」
「っ?」
いきなり話の内容が変わり、空気が温厚になる。
いままで凍っていた空気が、いきなり溶けたものだから、強張っていたからだが急に固まる形を無くし、そのままへなへなと力なく、高質なソファーに崩れこむ。
固まっていた空気も吸えるようになり、荒くなっていた息もどうにか収まっていく。
__なんか、いつもと違う雰囲気だったからいい話が聞けると思ったんだけどなぁ、的外れだったのかな?
でも、月光さんには何もかも見透かされてる気がする。
だから、なんか怖いんだよなぁ。
何かしらもどかしい気もするが、奏はそれを気にせずに「なに?」と聞き返してみた。
「いや、ちょっと思たんだけどさぁ。
ぶっちゃけ黒川ちゃんって、なんで坂口君が好きになっちゃったのかなぁって思うんだよねぇ。
奏君はさ、そう思わない?」
月光は悩めるポーズに右手を添えたような恰好で、美麗な笑顔を向けながらそう聞いてくる。
しかし、奏の意識はそれにまったく向いていなかった。
奏が気になったのは、『ちゃん』だった。
「いや、そうは思いませんけど__。
っていうか、なんですか、黒川ちゃんって、先ほどは黒川さんって言ってたじゃないですか、月光さん。
__黒川ちゃんって言われると、黒川さんが怒るの知っているんでしょう?」
「うーん、まぁ、そうなんだけどねー。
__なんとなぁく、癖だよ、そう癖なのさ。
君が知らないところで、僕と黒川ちゃんは知り合いだったのさ__、まぁ、僕だってよくわからないから、らしい、をつけた方がいいのかもね」
「つまりそれも、記憶を失う前の出来事ってことですか?」
「うん、そうみたいだね。
だって、なんにも知らずに街をぶらぶら歩いてたらさ、黒川ちゃんが血相変えて近づいてきて、『あなたなんで生きているんですか!?』って言ってくるんだよ?
初めのころは、なんでそんなことを言うのかわからなかったけど、なんとなく口をついて出てきた言葉が黒川ちゃんでさ。
まぁ、そこからどうにか打ち解けて、僕の過去について説明してもらったんだ、僕と彼が、闇企業で働いていて、一週間前に疾走していたということをね。
だから僕も本当に驚いちゃってさ、だって、その時の黒川ちゃん、まだ16歳だったんだもの」
「え__?」
いろいろと話の内容が頭に入ってくるのはいいが、あまりにも唐突な内容だったので、思わず声を漏らしてしまった。
__そんな、黒川さんが16歳で闇企業に、なんで?
黒川さんと月光さんが知り合いだったってことは知ってたけど、まさかこんなだっただなんて。
奏の脳内には、黒川と月光の関係についてが、ピックアップされていた。
だからこそ気付かなかった。
月光が段々話をそらしていることに。
「まぁ、そんなことはどうでもいいとして」
「はぁ」
随分ころころと話の内容が変わるものだから、ついていくだけで疲れてしまう。
「黒川ちゃんって、坂口君のどこがそんなに好きなのかな?」
そんなことはわからないけれど、まるで事実のように言葉が出てしまった。
「__ふぅん、そうなんだね」
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