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赤と白 壱
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「えー、こちら赤汰ぁ、『銅』の、えーと、なんだっけ?
ん、あ、そーそー、なんか、オウサマの下の下の人間二人、だっけか?
ああー、合ってたわ、で、__『捕まえてきた』わー」
暗い街の、其れまた暗い路地裏。
近くのホテルの、痛いくらい目に刺さるピンク色のネオンライトが、ぎりぎり届かないくらいの辺りで、一人の男がスマホを片手に通話をしている。
その姿は詳しくは見えないが、耳にあてられたスマホから漏れ出る、微量な光によって、黒髪だけではないのが分かっていた。
漆黒の髪に混ざる、赤。
それが、この赤汰という名の人間の、わかっているうち唯一の変わった特徴だった。
他にわかることといえば、少しハスキー掛かった声で、ハスキーいわば青年のような声音だったということ。
それ以外は、何もわからなかった。
彼が話している内容からして、彼__否、彼らは『銅』に関連しているようだった。
それも、敵対のような、血なまぐさい関係。
誰でもそのような関係であると察せるように、その場だけ雰囲気が暗かった。
が、その空気の中、大きく響き渡るものがあった。
…その言葉と、もう一つが、ただただ異常だったのだ。
『捕まえてきた』という言葉だ。
それを言うときだけ、赤汰の唇が、人工の白い光の中歪んだ。
勿論、強調されるように、一旦周辺が静まり返ったのは言うまでもない事実だ。
しかし、それに応じて足元で何かがごそりと動いたのだ。
それを赤汰は見逃すことなく、片足を近くに上げて静止を促すような動作を取る。
びくりと何かは震え、動かなくなった。
「__え?
んー、なにだんまりしてんのって?
そりゃあ、足元でアリがぐちゃぐちゃに入り混じってたから、気持ち悪くなってにらんでたんだけど。
知ってんでしょー、ぼっくんさ、俺が集合体恐怖症だっていうこと。
カミングアウトしたよね、__二番目に。
__え、強調すんなって、えー、だって知りたくないの?
俺がいっちばん初めにいう人だよ、誰か分かんの?
__え、正解、なんでわかんの。
__いつもラブラブしてっからって、いやー、べっつにぃ、ラブラブって程まだやってないしぃ、あとまだ告ってもないしぃ?
__え、うざい?
いやいやそんなこといわずにさ、もっと優しくしてよぼっくん。
__えー、いっつも優しくないんだもん、仕方ないじゃーん!」
段々雰囲気がほんわかしていく。
今まで暗く見えていた場所がほんのりと明かりを帯びたような気がした。
「__えー、あーはいはい、敬語ね、けーご。
年上には敬語ってホントお堅いっすねぇ、百年前の人?
んまぁ、言われたらそーっすかもしれないっすけどぉ…、俺らと歳、たったの一歳しか変わんないっすよねぇ?
__え、これ極秘?
いやー、俺本当全くこっちの世界についてはよくわかんないんで、そーゆーの判断できないんすわぁ。
__え、知らなかった?
ちょ、これ何年の仲だと思ってんの?」
赤汰は靴をカツカツと鳴らしながら、にししなんて笑いながら、そんな温厚としか言えないような会話を続けている。
足元でそれらは、怯えていた。
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