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⑤(2/24加筆修正)
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次の日。また、何匹かの化け物達が、俺達を見に来た。
少し見ては、ほかのやつのいる牢屋に足を向ける化け物達。そんな中、俺の牢屋の前で立ち止まる奴がいた。
「……」
いつもこの時間は、化け物達と顔を合わせないように、格子の方へ背を向けてふて寝をする俺だが、あまりに視線が痛くて、思わず振り返る。
見た目は、20代くらいだろうか。猫っ毛らしい、柔らかそうな蒼髪は、男にしては少し長く、肩に付いていた。切れ目の瞳は、新緑色。透き通るような白い肌に、美麗な顔立ち。2メートル近くありそうな体躯は、高価そうなスーツを見事に着こなしていた。
そいつは、どの化け物よりも美形で、少し儚げに見える。まるで、夜に咲く花のようだ。
「……」
俺はそいつから目を離せなくなる。何故だか分からない。だけど、もっと近くでこいつを見たいと強く思った。
「……」
体を起こし、格子ぎりぎりまで近付くと、正面から化け物を見つめる。
長い間、いや、数分、数秒だったかもしれない。とにかく、俺は時が止まったかのように、そいつを凝視していた。
不意に、化け物が目をそらし手を上げる。
「主人」
「はい、なんでしょうか?」
「こいつが欲しい。幾らだ」
「はい。これでいかがでしょう?」
「分かった。買おう。それと人間を飼うのに必要な物を適当に見繕ってくれ」
「お買い上げありがとうございます。すぐにご用意しますので」
どうやら俺は、こいつに買われたらしい。そこで、はっと我に返って頭を抱えた。
買われてどうする俺!?
「いや、近付いたのは俺からだし。いやいや、視線が痛かったからつい!」
自分の行動に、自分自身が混乱する。こんな事、初めてだ。
「おーい」
「なんだよ! むぐ!!!!」
パニックになった頭のまま、肩を何かで叩かれたので、何も考えず振り向いたら、口に何かを突っ込まれた。
この感触、嫌でも分かる。ジークの触手だ。
どうやら、俺が混乱しているうちに、あの化け物
は店長に連れて行かれたらしい。辺りを見回すが姿がない。代わりのようにジークが俺の牢屋に入ってきていた。
「珍しーね。黒髪ちゃんが素直に振り向くなんて」
「うっへ」
「こら、噛まない噛まない」
俺がお前の触手を噛むのは、もう反射だ。
最近、こいつの触手の感覚が気に入ってきてるなんて、死んでも言わないけどな。
「さて、俺達もそろそろ行くよ」
「んぐ!」
触手が吐き出した体液を思わず飲み込む。どうやら逃げない為の防止らしい。くそ、絶好の逃げ場面だったのに。
「君とはお別れか。寂しいな」
俺を担いで牢屋の外に出たジークがボソッと呟く。俺はせいせいするけどな。お前、俺の飼育員っていうの建前にして、毎回体弄るし。
「あの人、俺の兄さんの親友で、いい所の社長さんだけど、人間飼うの初めてらしいから、気を付けてね」
なにをだ。食べられないようにとかか?
「まぁ、君は暴れん坊で、脱走常習犯だけど、体液美味しいし、可愛いところも沢山あるから、上手くやれるんじゃないかな?」
「体液美味しいと可愛いは余計だ、アホ」
「あ、今俺に文句言ったでしょ」
「……なんで分かるんだよ」
「だてに、召喚師兼飼育員やってないからね。言葉はわからなくても、なんとなくニュアンスで分かるの」
はい、そーですか。
「じゃ。君が幸せな最期を迎えられることを祈ってるよ」
健闘祈りするな。俺は死ぬ気はねぇ。
まぁ、こいつは悪い奴ではなかったけどな。最初程、化け物に嫌悪感がないのは、ジークの影響もあるし。だが、それはこいつ限定だ。他の奴らは警戒心以外何もない。
そんな奴に、伝わらないとはいえ、何も言わない程、俺は薄情なやつじゃない。
「……世話になった」
「なに、お礼言ったの? もう、本当に可愛いなぁ」
「うっせぇ」
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