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⑥
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そうこう言ってるうちに、さっきの化け物達のいる部屋についた。俺を買った化け物の後ろには、執事なのか、燕尾服を着た奴がいて、こんもりと荷物を持っていた。きっとあれが、俺を飼う為の道具なのだろう。服が入ってるぽいのは何となくわかったが、それ以外の箱は、なにが入っているのか、考えたくもない。
「てーんちょ! 商品連れて来たよ」
「丁度良かった。今契約が終わったところだ。先ほどもいいましたが、この人間は脱走癖があります。飼育用にするのであれば、普段は檻に入れておくか、脱走防止用の家畜契約をすることをおすすめします。サービスでどちらかお付けできますが、どういたしますか?」
「……。おい人間」
「あ?」
「こっちの言ってる言葉は分かるのだろ? お前はどっちがいい?」
なに言ってんだ。こいつ。
「どっちも嫌に決まってんだろ」
「多分、どっちも嫌って言ってますね」
「どっちか選べ。契約なら一回。檻なら二回頷け」
「……」
思わず押し黙ってしまった。契約なんてしたら、きっとこいつが契約を破棄しない限り、離れられなくなるだろう。かといって、檻に閉じ込められるのもごめんだ。
俺の目的は、元の世界に、母さん達の元に帰ること。そのためには、情報が必要。そうなれば、選択は一つしかない。
「……」
俺は一回頷いた。檻に入れられるよりは、情報が収集しやすいからだ。それに、元の世界に戻れば、契約もなにも関係ない。
「では、契約をしますので、こちらへ」
俺は、ジークに連れられ、魔法陣の上に降ろされる。目の前には、あの化け物。店長が何か唱え、今度は化け物の体液を飲まされた。直後、魔法陣が光ったと思ったら、俺の左胸に、何かが浮かぶ。
限りなく黒に近い赤の花弁をもった薔薇とそれを閉じ込めるように這った茨の紋様だ。俺は何故か、この薔薇の名前を知っていた。
これは、ブラックバカラだ。
「この紋章で囲んだ場所から人間が出ようとすれば、体に激痛が走るようになっております。近くに旦那様がいれば、それに縛られることはないですが、旦那様から離れれば離れる程、痛みを発するようになっておりますので、ご注意ください」
店長が俺のいる場所でこれを話すのは、それを知っていれば、俺がこいつから逃げことはないだろうと思っているからだろう。
残念だな店長。俺は逃げる気満々だ。
「なにか分からないことがありましたら、遠慮なくお問い合わせください」
「分かった。行くぞ人間」
「ちょっ、担ぐな!」
「またねー。黒髪ちゃん」
ジーク達に見送られながら店を出る。
実は、俺、こっちに来てから、あの召喚された部屋と牢屋、査定室しか見たことがなかった。
だからだろう。ずっと心の片隅で思っていたのだ。実は、異世界なんていうのは嘘なんじゃないかと。いや、ただ単に、事実を認めたくなかっただけかもしれない。
だが、その時、俺は初めて現実と直面する。
「な……」
空を飛び交うドラゴン。二息歩行した獣。馬車を引く、見たことのない生き物。ちらちらと目の前を舞う妖精。
「うそ、だろ」
漠然と、けど確実に分かった。理解してしまった。
俺は、全く別世界に来てしまったのだと。
「……」
本当に、元の世界へ帰れるのだろうか?
考えまいとしていた不安が、俺の心を微かに揺らした瞬間だった。
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