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⑤
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「人間は俺達と同じ雑食だと聞いてシェフに食事を作らせてある。それを食べろ」
そう言われ、通された部屋には、なんとまぁ様々な食べ物が机に並んでいた。殆どの食べ物が食材をそのまま焼いてあるだけだったが。
店にいた時も思ったが、こっちの世界には、焼くしか調理法がないのか? それとも、食材の味を損なわないための配慮なのか? どちらにせよ、飽きがくるだろ、これ。
「座れ」
「……」
言われるまま椅子に座ると、机を挟んだ目の前に、化け物が座った。こいつも一緒に食べるなら、毒が入ってる可能性はないのだろう。
まぁ、こいつは俺のことをペットとして買ったみたいだしな。それに、毒なんかに犯された体よりも、新鮮で何の雑味もない状態の体を食べる方が、この化け物は好きそう気がする。
食べられる気は、端からねぇし、もしそうなっても、最後の最後まで抵抗する気満々だ。けど、万が一、本当の本当の万が一が起きた場合、踊り食いだけは勘弁してもらいたい。生きながら消化液に溶かされるなんて、想像しただけで、背筋が凍りそうだ。食べるならいっそ、一思いに殺してから食べて欲しい。
「って、俺が言っても通じねぇんだけどな」
ホント、こっちだけ言葉が分かるっていうのも不便だな。
「食べられないものがあれば、避けてくれ」
化け物にそう言われたので、俺は遠慮なく避けた。
人間の丸焼きらしきものを。
皿を動かした瞬間、人肉が焦げた独特な匂いと、苦悶な表情が見えてしまい、思い切り顔を歪めてしまった。
「……ひでぇ」
呟き、目をそらす。多分、外国人だろう。辛うじて残った金髪が、それを物語っていた。年は、俺と同じくらいに見える。きっと、俺みたいに召喚され、わけも分からないまま殺されたんだろう。
まさか、こいつも天国で自分の体が丸焼きになってこんな化け物の食卓に並ぶなんて思ってもみなかっただろう。
こいつ、それなりに人間のこと調べてるみたいだったが、人間は同種食いしませんって書いてなかったのかよ。シェフもシェフで、もうちょい配慮してくれ。
「……」
けど、こうやって普通に食卓に並ぶということは、こいつらにとって人肉は、俺達で言う鶏や豚とかの食用肉と同じ扱いなのかもしれない。
「(もしも……)」
俺が黒髪じゃなかったら……。そう考えるとぞっとする。この食卓にならんでいたのは、この外国人ではなく、俺だったのじゃないかと。
「それは、食べれないのか。結構美味しいのだがな」
しかも、俺が避けた人間の丸焼きをそんな事言いながら、食べていく目の前の奴を、改めて化け物なんだなと認識せざるおえないオマケまでついてきた。
ここは、別世界。俺の常識など、塵のように吹き飛ばされる場所。周りには、信じてはいけない化け物ばかり。その中で、俺は生きて、元の世界に帰らないといけないのだ。それを再度確認させられた。
この光景にも慣れなければ、と思うと同時に、慣れたらおしまいだと思う自分もいる。
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