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「体液が美味いな」
「第一感想がそれ!?」
「美味いのは重要だろう」
「いやー、そうだけど。ペット用なんだろ」
「そうだな」
「ならさ、こうー。可愛いーとか、癒されたーとか、そういう話はないわけ?」
「可愛い、か」
そういえば。
「この前、俺の退社がかなり遅くなった日を覚えてるか?」
「あー。会議が立て込んだ日だっけ?」
「その日、帰ってからあれの部屋に行ったら、あれが寝てたので顔を覗き込んだ」
「ふむふむ」
「そしたら、目を開けたから、起きたかと思って身を屈めたら、ムスッとした顔をして、近くの花瓶にさしてあった花を突きつけられた。どうやら、本来の姿で来なかったのが不服だったらしい」
「……どういう場面だよそれ。というより、人間の前で本来の姿になったら、怯えるか、狂乱するだろ」
「あれに限って、それはない」
言い切ると、フリークスは目を丸くしていた。
魔力とは、言ってみれば空気のような、生きるためにはなくてはならないものだ。殆どの種族は、自然等から吸い取ったり、生まれ持った魔力を使いながら生活している。
俺達触手族も、他の種族同様、魔力を吸収をする事ができる。だが、それだけではなく、自分の持っている魔力を他のものに与えることが出来るという、特殊な体質も持っているのだ。そのせいか、生まれ持った魔力が他の種族よりも多い者が沢山いる。
魔力は多く使えば使う程、より強力な魔法を発動することが出来る。かと言って、多く持っていれば良いというものでもない。薬は量を守れば体に良い影響を与えるが、一つ間違えれば毒となる。それは魔力も同じなのだ。
魔力は、自分の中に溜め込んでおける量が生まれた時から決まっており、俺達はそれを許容量と呼んでいる。これはどんなに努力や魔法を使用しても、変えられないものである。
自分の許容を越えた魔力を体に取り入れると、溢れた魔力が暴走し、内から持ち主の体を破壊し始める。そして、最後にはその者を殺してしまうのだ。
特に一定数以上の魔力を持った触手族は、常に魔力を放出してしまうという特殊な体質を持ち合わせているので、近くにいるだけで、許容量を越える程の魔力をすぐに得られてしまう。なので、長く共にいると魔力暴走を起こす可能性が跳ね上がるのだ。
「お前って、持ってる魔力が莫大過ぎて、いつも放出してる状態だったよな?」
「魔力をかなり抑える人間姿になって、何十個の魔力抑制効果のある装飾品を付けたこの状態でも、許容量が小さいものなら近付けないだろうな」
「俺が知ってる状態から変わってなければ、本来の姿の時のしゃちょーって、神でも殺せる位の魔力放出してたので合ってるか?」
「あぁ。お前がふざけ半分で俺の本来の姿の時、突撃してきて数分で魔力暴走を起こしかけた頃から変わってない」
「俺、全種族の中でも五本の指に入るくらいの許容量あるはずなのになー」
「だからこそ普通の者は、俺を恐れ、近づかない」
だが……。
「あれは、俺の本来の姿を初めて見た時、笑ったんだ」
触手族で、2番目に魔力が多く放たれるのは、触手だ。
俺みたいなのが、本来の姿の時に、1本でも供給相手に触手を巻き付けると、例え許容量が多い奴でも、過剰な魔力供給に耐えきれず、魔力暴走を起こす。下手したら、死ぬ場合もある。現に、そうなったやつを何匹も見てきた。
なのにトールは、それはもう綺麗なものを見る目で俺を見つめ、愛おしいもののように触手に触れ、自分の世界の言葉を口にした。それがどんな意味なのか、分からない。だが、貶しや疎みではなく、褒められているだとすぐに分かった。
あの姿は今でも大きな衝撃として、俺の心に深く刻まれている。
トールなら、自分の全てを受け入れてくれるのではないか。確証はなかったが確信はあった。だから俺は、トールに全ての触手を巻き付け、魔力を供給した。これで死んだら、それはそれだと。
《 ! !!》
けど、トールは壊れなかった。俺が知っている中で1番許容量の多い奴が、確実に暴走を起こして死ぬであろう魔力供給量をとっくに越えているのに。
あっさりと、なんとでもないかのように受け入れたのだ。空中に浮いたせいで、少し不安定な体を揺らしながら。
親ですら、化け物だと発狂し、何匹もの他人を狂わせ、殺した忌まわしき俺の魔力。それを無力な人間が、当たり前のように、なんの躊躇いもなく受け入れてくれた。それがどんなに嬉しかったか。現す言葉を俺は知らない。
それからというもの俺にとって、トールはただの人間という枠を越えた。小さい頃から恋焦がれて止まなかった『俺だけのもの』を手に入れた瞬間だったのだ。
ーーー
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その記念として、本日は2ページアップさせて頂きます。もう1ページは、夕方頃更新予定です!
これからも、俺と人外達の愉快な日常をよろしくお願いします!
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