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料理
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最近、思うことがある。
「飽きた」
出てくる料理のレパートリーが少なすぎて、飽きたのだ。というより、シェフには悪いが、そもそも食材をただ焼いて調味料を振っただけのこれらを果たして料理と言っていいのか疑問だった。
「シェフに言って、調理場借りるか」
こう見えても俺、料理は結構得意だったりする。住んでたマンションの1階がめっちゃ色々こだわりを持つコックが仕切ったレストランで、そこに小さい頃から遊びに行ってのも一つの理由だろう。
ちなみに、俺はそこのコックのことをおやっさんと呼んでいた。
おやっさんは、頑固で、負けず嫌いで、奥さん以外の相手には、殴り合いと怒鳴り声が会話みたいな性格だ。普通の会話で始まって普通の会話で終わることなんて、片手で数えるくらしかねぇ勢いだ。ほかの所なら、パワハラで訴えられてただろうな。
けど、なによりもお客さんの美味しいの笑顔の為にはどんな事にも決して手を抜かない。料理人の鑑みたいな人でもあった。お客さんから要望があれば、知らない料理なら徹底的に調べ、材料がないなら、現地に調達しに行ってでも、裏メニューという名目で、お客さんに提供していた。お陰で、メインメニュー数十、裏メニュー数百あるという、異様な店になっていた。
ま、あまりにもおやっさんが裏メニュー増やすんで、奥さんが1回プッチンしたけどな。あのいつも笑顔でほんわか雰囲気の奥さんが、表情そのままなのに、怒りのオーラバンバン出しておやっさんを叱ってた姿は今でもトラウマものだ。
俺はそこで殴られ蹴られ、ぎゃんぎゃん喧嘩しながらも料理を学んだ。今ではスペシャル裏メニュー以外の料理なら、お客さんに出せる腕前にまでなった。
まぁ、スペシャル裏メニューも出来るんだが、頑としておやっさんが譲ってくれない。それで、こっちの世界くる数日前も殴る蹴るの大喧嘩をしたのは懐かしい。
「……」
もしかしたら、俺が喧嘩好きなのは、おやっさんの影響かもしれない。
「おやっさん元気かな」
最近腰の調子が悪いって言ってたが、大丈夫だろうか? あんな性格だから、従業員、俺と奥さんしかいないんだよな。お客さんの為なら秘境にまで行く人だ。絶対に無理している。
「はやく、帰って楽させてやらないとな」
こんな事、本人の目の前でいったらきっとお玉辺りが豪速球で飛んでくるだろうけど。まぁ、おやっさんなりの照れ隠しと思えば可愛いものだ。
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