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アミラ曰く、トールはシェフと試作をしたり、屋敷の中を探索したりと伸び伸びしており、俺がいなくて寂しそうにしている様子が全くないらしい。彼が屋敷から逃げることなく、普通に生活してるのは喜ばしい事だが、正直少しくらいは態度に出してくれればいいのにと思ってしまう自分もいる。なんとも笑えた話だ。
「あ、けど明日やっと休み取れたんだって?」
「流石にこの状態を維持してるのが、辛くなってきた」
俺にとって人間の姿は、常に水が出ている蛇口に無理矢理蓋をしているような状態だ。多少なら体に異常は出ないが、長期間となれば話は変わってくる。
今は、抑えすぎた魔力が、体の中で暴れ回っている状態だ。既に魔力を抑制する装飾品が、俺の魔力に耐えきれず何個か壊れていた。このままいけば、いつどこで魔力抑制が崩壊して、濃度の高すぎる魔力を放出してしまうかわからない。
その前に、本来の姿に戻ってガス抜きをしないと、被害が尋常ではないのだ。
「何日くらい休む予定?」
「魔力濃度を戻すのに2日、魔力抑制が治るのに1日……。最短で3日だな」
「なら、4日休め」
「何故だ」
間髪入れずに剣呑な声音でフリークスに訊ねる。目処が付いたとはいえ、まだ社内には多少の混乱がある。そんな中、社長が4日も休んだら部下に示しが付かない。
「この業績の一番の貢献者は誰よ?」
「あれだろ」
「なら、トールくんにお礼しなきゃ」
「お礼?」
「 たこ焼きのレシピのお礼って」
「あれはそんなの求めてないだろ」
「お前なぁ。こんなにも会社に貢献してくれたにも関わらず、数週間放置したペットになにもなしとかありえないだろ! だからトールくん、毎日脱走するんじゃないの?」
「あいつは最近脱走しない」
「うそ! まじで!?」
「前に1回外に出た時、紋章の影響で死にかけたからな。懲りたらしい」
「それって大人しくお留守番できるようになったってことでしょ! それなら余計に褒めてやらないと!」
「そうか?」
「取り敢えず、屋敷帰ったら、まず最初に放置した数週間分、トールくんをたっぷり可愛がること! あとプレゼントも忘れるなよ! じゃないとトールくんに嫌われちゃうぞ!」
トールに嫌われる。その言葉は、思ったよりも俺の心に刺さった。
それは、嫌だ。
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