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「そういやぁ、まだ名乗ってなかった。俺はリオンだ。おめぇは?」
「たこ焼きを作ってる会社を知ってるか?」
「あ? なんだいきなり」
「知ってるか?」
「あぁ、知ってるぜ。今流行ってるやつだろ? 獣族でも人気で、即日完売だって聞いてるぞ」
「俺はそこの社長だ」
ビシッと空気が音を立てて凍った。
主にリオンの周りが、だ。
「しゃ、社長……?」
「なんなら、名刺を出そうか?」
にやにやと化け物が笑う。あ、こいつリオンのことからかってやがる。どやっと言う表情もしてっから、さっきの攻撃の意趣返しみたいなつもりなんだろう。
一方、余程衝撃だったのか、リオンが顔を伏せたまま動かない。微かに肩も震えているし、もしかして、反省かなにかでもしてるのか?
珍しい。そんな事を俺が思った次の瞬間。
「ずけぇなおまえ!」
「は?」
顔を上げたリオンは、俺が考えていたのと反して、キラキラと子供のように目を輝かがやかした表情をしていた。そのままがっしりと化け物の手を掴む。これは俺も化け物も予想外で、2人で思わずリオンを見つめてちまった。
そんな俺達の姿に気付くことなく、リオンは言葉を続ける。
「俺さ、そういう自分で何かを成し遂げて、頂点とった奴とか、すっげぇ憧れてんだよ。なぁ、社長さん! 色々と聞かせてくれよ! 苦労とかさ、乗り越えた試練とかさ!!」
「あ、あぁ」
リオンの勢いに押されて、たじたじな化け物に、俺は思わず噴き出した。なんだこれ。傑作だ。面白過ぎる。いや、まぁリオンらしいっちゃ、らしいけどな。
「あ、けど、社長なら敬語使った方がいいか?」
「さっきのままでいい。殴り合った奴の片方が畏まるのはおかしいだろ」
「そうだな。そうさせてもらう」
リオンは、ぽかんとしてる俺にニカッと笑うと、何かを思い出したかのか、ポンと手を打つ。
「だとしたら、あの脱走防止契約は社長さんとのだったのか。すまねぇ。瀕死のこいつにあの契約は致命傷になりそうだったから、強制契約破棄魔法を使っちまった」
「構わない。また契約すればいい」
なんとでもないように言う化け物に、俺は少しもやっとした感覚を覚えた。
いままでの俺の行動を考えると、化け物の言ってることは正しいんだろう。実際、俺はまだ向こうの世界に帰ることを諦めてねぇし。
だけど、この世界にいる間は、もう化け物の元から逃げる気はない。これだけは胸を張って言える。だからもう、あの契約は実際の所、必要ない。
かと言って、大人しく屋敷にいるだけだったら、なにも前進しねぇ。やはり、情報を集めるには外に出るしかない訳で。でもきっと、化け物はそれを許さないだろうし。
「……」
俺は、これからどうすればいいんだ……?
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