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そこに居たのはクラスメイトの田中翔太君だった。特に目立つ容姿でもなく、前にいくタイプでもない彼は印象は薄い。だがクラスメイトの名前は全員覚えていた
「翔太君だよね、ずっと話したいなって思ってたんだ」
「嬉しいな〜、僕も玲君と遊んでみたいなって思ってたんだけど、なかなか勇気が出なくて。玲君は人気者だから」
ふわふわした空気を纏いながら翔太君は自然と隣に座ってきた
「そんなことないよ」
「玲君つくるの上手だね!僕いつも潰れちゃうんだ」
翔太君は僕というより、砂で作った城が気になって仕方ないような様子で目をキラキラさせている
「じゃあ一緒に作る?」
「いいの?!」
最初に城を作っていた時は夕暮れ近かったのに、夢中になっていたのかかなり暗くなっていた
「凄い!こんな大きいの作ったことないよ!」
「僕も、砂遊びはお母さんが嫌がるからあんまりしないから」
「あっ僕もだ、うーん絶対怒られるよ」
「翔太君はこんな時間まで遊んでて大丈夫なの?」
「お母さん帰ってくるの遅いから大丈夫だよ、けどそろそろ帰らないとかな」
「僕と一緒だね」
「玲君のお母さんとお父さんも帰ってくるの遅いんだ。だからこうやって一人で遊んでる事が多いんだけど、今日は玲君がいて楽しかった!」
「僕も翔太君と遊べて楽しかったよ」
自分だけが一人のわけじゃないんだ・・・
自分と同じような境遇の子もいるんだと思うと、少し気持ちが明るく軽くなった気がした
「そうだ!じゃあまた今度も
「お兄ちゃ〜ん!!!」
翔太君が話すのを遮るように公園の入り口のところで声がする
「優!」
ぱたぱたと走って翔太君に抱きついている、おそらく僕達と同じくらいの学年だ
「一人だと危ないよ!」
「一人じゃないよ、お母さんもいる」
暗くて見えなかったが、公園の入り口には女の人の影がある
きっと翔太君のお母さんだ
「今日お母さん早く帰って来たら一緒に買い物に行ってきたんだよ、お兄ちゃんも早く帰ろ?」
「うーん・・・。じゃあ玲君も一緒に帰ろう」
こっちを見て気を使っているのか、提案される
これは一緒に帰るという選択をした方が翔太君が気を使わないで帰れるから、正解だと思う
けど・・・さっきまで翔太君も両親の帰りが遅くて、遅くまで遊べると言っていたからか勝手に仲間意識が芽生えていた。それが弟もいてお母さんが迎えに来るといった自分とは全く違う環境に少し寂しさを感じる
「僕は・・お母さんが公園に迎えに来るから大丈夫だよ」
また嘘をつく
それにこれは最初に別れたクラスメイトについた嘘とはまた別に、見栄もある
「・・・」
翔太君はこっちをじっと見てきて、嘘がバレたのかとドキドキする
「じゃあ僕も玲君のお母さんが来るまでここにいる」
「えっ・・・?大丈夫だよ」
思いがけない言葉をかけられて、呆気にとられる
「ううん、大丈夫じゃないよ。だって僕だったら先に帰えられたら寂しいもん」
「僕は一人の時間が長いから大丈夫だよ、ありがとう」
「ダメだよ、だって普通一人は寂しい」
普通・・・?
僕は特別だから寂しくない
これまでだって特別だから一人で夜ご飯も食べれるし、一人で寝れる。だからここで一人で帰ることだって寂しくない
「僕は寂しくなんか・・」
「じゃあ僕がここに居たいからいるね。優ごめんね、もう少ししたら帰るってお母さんに伝えて?」
「・・うん。早く帰って来てね」
「ありがとう」
翔太君の弟は公園から出て、お母さんと一緒に手を繋いで歩いていく
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