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-1- 『弱い僕と強い通り魔さん』
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<自宅>
「...颯(はやと)...起きる時間だよ...」ユサユサ
「...う...ん」ムクッ
あさが来た...
今日も変わらない、いつもの朝
「颯...おばあちゃんまた1週間家には帰らないからね...何かあったらすぐ病院に行くんだよ…」
叔母を見ると綺麗な正装をして
もうすぐにでも出掛けるような感じだった
「...朝食は作っておいたからね...
首の機械...忘れずにしてくんだよ...」
「...うん...行ってらっしゃい...おばあちゃん...」
嗚呼、今日もまた地獄が始まる...
叔母の作った朝食を食べ、
必ず付けろと、忠告された機械を部屋に置き
学校へと向かった
<学校>
「......」ガラガラ...
教室に入ると皆が一斉に僕の方を見る…
―うわ...あいつ、まだくたばってねぇよ...―
―...気持ち悪ぃ...早く死なねぇかな...―
そんな声まで聞こえてくる
「...ッ...」スッ
なんとか重たい足を動かし
窓側の1番後にある自分の席に座った
「おいおいー...佐伯ィ?
まさか...昨日の約束忘れたのかよぉ?」ドサドサッ
金髪で耳にピアスを開けた男性が僕に近づく
僕に突っかかってきたこの人はまさちゃん...
昔は優しくて気の弱い僕をよく仲間に入れてくれた
因みにまさちゃんとは昔のあだ名で
本名は真慧(まさと)
あだ名でお互いを呼び合うほど仲が良かった...
でも、今では...
「ご、ごめん...まさちゃん...
し、宿題多くて全部終わんなかった…」スッ
鞄からノートを取り出し彼に渡す
「はぁ?全部やってくるって言う約束だよなぁ?
おいおい、約束すら守れねーのかよッ!?」バシッ
渡そうとしたノートは地面へ投げ飛ばされた
「ほ、本当に...ごめんね、まさちゃん...
昨日は少し体調が悪くて...」
「ッ...まさちゃんって呼ぶなつったろ!?」グッ
おもいっきり胸ぐらを掴まれる...
殴られると思い、反射的に目を瞑るが...
「...あー...悪ぃわりぃ、お前殴るとうるせぇ機械が鳴り出すんだったなw」パッ
まさちゃんは手を離して嘲笑いながら
僕から去っていく
「......ッ」
僕はノートを拾い上げるために立ち上がる
周りにいたギャラリーも
耳を塞ぎながら僕から遠ざかる
実は、常備しなければいけない首の機械は...
僕の心拍数を計測し危険な数値になると
大きな音を出して知らせてくれる特殊な機械
だが...
この音が本当に嫌な音でしかも急に鳴り出すのだ
何度か学校で鳴った事があるが
その時に皆に不快な思いをさせてしまった...
これも、きっと...僕が嫌われる要因の一つ......
ーガラガラ 「ほらー、お前ら席に付けー...」
担任が入ってきて、皆一斉に席に着いた
「これからHRをはじめるぞー」
...早く...帰りたいな...
「...って事だ、分かったな…
それと最後に連絡だ」
担任が真剣な顔で、話をする
「...皆もニュースで見たと思うが...
最近、この辺りで通り魔が出没している...
登下校は出来るだけ1人で帰らないようにな」
僕はテレビとか見ないので初耳だったが…
...1人で帰るな...か...
「...では、HR終わり
皆、今日1日頑張るように」
その担任の合図で皆一斉に動き出す
今日...も...頑張ろう...
ーキーンコーンカーンコーン...
...1日の最後のチャイムが鳴った
外を見ると寒くなった季節のせいで
すでに真っ暗だった...
周りはそれぞれ集まって帰る様子だ
僕は...
「佐伯ぃ?お前、一緒に帰る人いねーのか?」
まさちゃんがまた嘲笑いながら近づく
彼の後には一緒に帰るであろう人達が大勢いた...
流石、まさちゃん...ひとりぼっちの僕とは大違いだ...
「......いない...よ...」
「...まぁ、そうだろうなぁw
気弱なお前のことだ、誘えるわけねーもんなw」
後ろの人たちもまさちゃんの言葉で僕を嘲笑う...
...どうして...昔は...いつも一緒で...
...守ってくれたのに...
涙を必死に堪える...
嗚呼...僕は...何で生きてるんだろう...
何のために?
消えたい...
死にたい...
誰か...僕を...殺して
「まぁ、お前がどうしてもってゆーなら
一緒に帰ってやらないことも...<ガタンッ>
まさちゃんがなんて言ったのなんて聞こえなかった
耐えきれず、僕は荷物を持って駆け足で廊下へ出た
「あいつ、すげー弱ぇーよなw
ちょっと言っただけで泣きそうになっちゃってよー」
「気持ち悪ぃよなー、男のくせにw
なぁー、まさー...
「黙ってろよ...」
(...あのバカ...
通り魔が居るんだぞ...分かってんのか?...
お前は黙って...俺の言う通りにしてりゃあいんだよッ)
<帰り道>
「はぁ、はぁ...」
駆け足で逃げてきちゃったが...
まさちゃん...怒ってるだろうな...
「ッはぁ...はぁ...」
すっごい走ったわけじゃないのに...
僕の息はかなり上がっていた
...やばい...落ち着かせなきゃ...
「ッすー.......はー...」
必死に深呼吸をして落ち着かせる
首の機械を着けていたらきっと今頃
鳴っていたんだろうな...
あの機械...結構敏感に反応するから...
つけてこなくて良かった...
「...寒ッ...」
季節は冬...
汗をかいたため、体が冷えてしまっていた...
鞄の中からマフラーを取り出し
首に巻く...
このマフラーは、
首の機械が周りから目立たないようにと
祖母が編んでくれたものだ...
あったかい...
このまま...眠りにつくように...
死ねたらな...
―ガタンッ!―
「ッ、な、何!?」
いきなり路地の裏の方から大きな物音がした...
もしかして...先生が朝言ってた...通り魔?
「...ッ」
僕は気になって路地裏へと進んでいった...
...殺してもらえるかもしれない、と
心の何処かで思いながら...
「...こんなとこ...あったんだ...」
路地裏は人の気配が全く無く
真っ暗なので、なんだか怖い気がした
進んでも進んでも...
僕が望んでいた影は見えなかった
「...なんだ...気のせいだったのかな...」
僕が戻ろうとした...その時...
―ガシッ!!
いきなり腰の部分を掴まれた
驚いて振り向くと...
「...た......す...け...て...」
女性が僕の腰に掴まっていた…
...その女性は...喉のところが切られていて
赤い血液が大量に溢れ出ていた...
「ッ...わ、わぁぁぁぁあああッ!?」
驚いて体勢を崩し地面へ倒れる
そのまま女性が上に倒れかかった...
「...と、...お...ま...殺...ッれる......」
喉が切られていてるだからか
その女性の声はとてもか細いもので
何を言っているのか聞き取れない...
「や、やだ...はな、離してッ」
怖くなり.....女性の体を退かそうとした...
だが、非力な僕の力じゃ
女性の体なんて退かせっこなかった...
「ッはぁ...はぁッ...や、やだッ...!!」
やばい...どうやら、この状況のせいで
心拍数が上がったらしい...
内側の何かが焼けているように熱い...
落ち着かせようと、必死に息を整えようとすると...
―カツッ...カツッ...―
路地裏の奥から足音が聞こえた…
見ると、黒い服でフードを被った男性が近づいてくる
男性の手には血のついたナイフ...
よく見ると男性は血だらけだった...
「あ.........やッ......た......」
男性の姿が見えた途端に
女性は怯えたような顔をする...
...もしかして...この人が...
「...ッたく......もうおしまいかよ...
ちぃったぁ...骨のある奴だと思ったがッ」グッ
男性は何かを言いながら女性の髪を引っ張り
顔を上げさせる...
下敷きになっている僕は
何も出来ずにただその状況を見ていた
「...い、..........や、......て、...」
「なぁ.....下にいる人間よぉ...
...いいもの見せてやるよッ!!」グサッッ!!
女性の首元を持っていたナイフで突き刺した
刺された女性は声にならない悲鳴を上げた後
白目になり、また僕の上に倒れ込む
女性の吹き出した血が顔にかかる...
「ッは、はははっ!!馬鹿な女だなぁ!?
......次は...お前の番...!」グッ
僕の体を引っ張り壁に叩きつけた
「ッ...!?」
結構強く叩きつけられたため
体に振動が響く...
「...なぁ?怖いか?今から死ぬ気分はどうだ?」
男性がナイフを僕の首に近づけて言う
その時、フードで隠れた男性の顔が少しみえた
...楽しそうに...笑っていた...
ふと、昔...3人でよく遊んでた頃が頭に浮かんだ...
あの時...皆、こんな風に...笑いあってたな...
僕を殺して...僕で...そんなに喜んでくれるなら...
「ッ...と、通り魔...さん...」
僕は小さな震える声を絞り出す
「...は?」
「.........僕で...幸せになって?......」
僕は少し微笑みながら
男性に言った
「...ッ?な、何言って...」
男性はフードの隙間から驚いたような顔を見せる
途端に内側から何かがせり上がってくる感覚がした...
「ッ...!?っう...ごほっ、ゴホッ!!」
堪らず咳き込むとー...
「...あ...ッ...や......ッゴホッ!!」
大量の血液が...僕の口から出てきた...
どうやら、今までの事もあり
体にかなりの負荷がかかったらしい...
「...ッゴホ...」ドサッ...
体を支える力もなく壁沿いに地面へ倒れこむ
...目が霞んできた...
...ぼく...このまま死ぬ...のか...
まぁ...それでも...
「...ッゴホッ通りッ魔さん.....あ...ありが...と...」
「...ッお、おいっ!」
意識の片隅で
通り魔さんが焦ったような表情をしたのが目に写った
〈補足説明〉
・首の機械について
颯が着けている首の機械、あれは常に心拍数を計測する事ができる
もし、心拍数が規定の数値より高い、または低い場合
警告【この状態の警告音はLv3またはLv4】が鳴り出し周りに知らせる
この場合予想される症状は吐血、体温低下、意識不明
だが、もし規定の数値を大幅に越えてしまった場合のみ警報【この状態の警告音はLv5(LvMAX)】が鳴る
この場合、症状はLv3、4と同じだが最悪の場合、心拍停止に陥る可能性が高い
Lv5がなった時点で生存確率は25%にまで低下
・通り魔事件について
この地区一帯で発生している
今起こっているのは全部で6件(男性3人 女性2人 子供1人)全ての死体は喉を掻っ切られた状態で即死と判断されている。また、被害者の共通点がないことから無差別で行っていることが考えられる
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