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偽物
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タハ「サイード様!!!」
突然、扉が開かれ、タハが血相を替えて入ってきた。こんなに取り乱した様子の彼を俺は見た事がない。それは、サイードも同じだった。
俺たちはただならぬ気配を感じとった。
サイード「落ち着けタハ。どうしたのだ。」
タハ「国王が…お亡くなりになりました」
国王が亡くなった…
その知らせは、サイードの帰国を決定づけるものだ。
サイード「お父様が…」
タハ「先程体調が急変されて……そのまま……。王位継承権は、サイード様とルシール様の2人にあると布告されました…」
サイード「ルシール叔父様か………確かにお父様の遺言か」
タハ「定かではありませんが……。しかし僕はなにかの陰謀かと…」
まだまだ幼いタハから陰謀という言葉が出たのに俺は驚いた。ふとサイードを見上げると、見たことも無いくらい、眉間に皺を寄せていた。
ハルキ「サイード…大丈夫か……陰謀って…」
サイード「あぁ。分かっている。ルシール叔父様はお父様の兄で元々王位を継ぐはずだった人だ。だが、不祥事を起こして国外追放された。父が病で倒れた時、真っ先に動き出したのは彼だった。王位を狙っているに違いない。タハすぐに帰国する。プライベートジェットの手配を頼む。」
タハ「かしこまりました」
サイード「レン、ハヤト。ハルキを私に貸してはくれないか…国の民に幸せな暮らしをさせてやるためにも、叔父様に王位は譲れない。私には今すぐにでも后が必要だ。必ずここにハルキを連れ帰って決着をつけると約束する。」
レン「……わかった。必ず無事に連れ帰ると約束するなら。」
ハヤト「あなたの抱えているものの大切さは私にも分かります。この決着はハルキが帰ってきたらつけましょう」
サイードは2人と固く握手をして、俺を守ることを誓った。そして、俺の方に向き直し、優しく手を取って言った。
サイード「ありがとう。………ハルキ、私の国の他身を守るために、私と共にムフタールに来てほしい。私が王位を正式に継ぐまでで構わない。」
俺はゆっくりと頷いた。
サイードは優しく笑顔を見せると、さっとベッドから俺を横抱きにして抱え上げ、自身のジャケットを掛けて部屋から出た。
黒塗りの立派な車に乗せられ、そのまま飛行機に乗せられて、俺は日本をあとにした。
ハルキ「んん……」
目を覚ますと、俺はベッドの上で横になっていた。
見覚えのある場所……
ここはサイードの部屋だ。
大人が5人くらい寝られそうな大きなベッドの周りには、うっすらと向こうが透けるカーテンが掛けられており、そこから見える何もかもが異世界のものばかり。
っつーか俺、服持ってきてねーし!!
飛行機に乗せられた時もサイードのジャケットをかけただけだったし、今は布1枚もない。
こ、これじゃ外に出られねぇ…
とりあえずベッドから降りて、タンスのようなところを開けたり、引き出しの中を探ってみたりして、なにか着るものを探した。
トントン
タハ「失礼致します。ハルキ様。」
ハルキ「タハ!」
タハの手にはこれまた見覚えのある民族衣装が乗せられており、俺は急いで駆け寄った。
タハも察したように、俺に服を着せてくれた。
タハ「サイード様は国中の視察に出られました。僕達は明日の王族の集まりのためにマナーの勉強です。」
ハルキ「王族の集まりって俺が出る必要あるのか?」
タハ「はい。そこでハルキ様との結婚を王族の皆様に発表して、次の日に国中に発表する予定です。幸せなニュースがあれば、国王亡き後の悲しみに暮れている国民たちへ希望を与えることができ、サイード様の王位継承も濃厚に…。視察もそのためです。」
なるほど、この国では国王になる為に結婚は必須…
サイードが結婚すれば、国民的にも王族的にもバックアップしやすいという訳か。
俺とタハは、大広間に移動した。
広間の真ん中には20人くらいが座れそうな大きなテーブルが置かれ、その上にご馳走が置かれていた。
タハ「基本的に王様が1番端の一人席に座ります。日本で言うお誕生日席と呼ばれる場所です。その右隣にお后様が座り、左隣から順に王位継承権を持つ王子様や親族が座ります。」
ハルキ「で、俺はどこに座るんだ?」
タハ「ハルキ様の椅子はございません。」
ハルキ「…………は?」
タハ「お后様以外の各出席者の恋人や婚約者様、奥様方は、そのお相手の膝に座ります。」
はァァァああああああ?!?!
聞いてねぇよ!!
ってことは何か?大切な王位継承の話をしている時に、俺はサイードの膝に座ってろってことか?!
タハ「少しでも嫌な顔をしてはいけません。ご夫婦の安定こそ、この国では最も大切なこと。サイード様の言うことには必ず従ってください。そして、どれだけお二人の関係が親密かを示してください。」
ハルキ「………………やっぱ無理!俺は出ねぇぞ!」
タハ「待ってくださいハルキ様!」
タハに背を向け、大広間の出口に向かって歩く。
そんなのやってられるかよっ……////
恥ずかしい///
?「あなたがハルキさんですね?」
タハ「お后様!……そうでございます。お体はもう大丈夫なのですか?」
お后様?!
後ろを振り返ると、タハは片膝をついて頭を下げていた。
この人が…お后様…
マヒロ「ええ。今日は少し気分がいいのです…。そんなに気をはらないで…サイードが日本人の恋人を連れてくると聞いて…あ、そうそう私も日本人です。とても会いたかった…ハルキさん。マヒロと呼んでください。」
ハルキ「マヒロ…さん……」
薄く綺麗な紫の衣を纏った、とても美しい男。
肌は白くきめかまかく、整った顔立ちと優しげに微笑む彼からは気品と優雅さが感じられた。
同じ日本人でもこんなに違うのか……
マヒロ「少しお話がしたいのだけれど…」
タハ「かしこまりました。直ぐにお茶の用意を…」
タハは慌てたように立ちあがり、俺たちに一礼をして、急いで部屋を出ていった。
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