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(玖音side)
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びっくりした。
教室の前にいたのは、和くんとよく一緒にいるのをみる眼鏡をかけた大人しそうな男の子だった。
表情は変わんないけど怒ってるのはなんとなくわかって、校舎裏に連れ出す。
ここなら殴られても周りに見られないし大丈夫。
なんとなく殴られる覚悟はしてた。
けど紺野くんは殴ってこなかった。
殴り掛かられそうにはなったけど、ぐっと服を握られて堪えるようにしてた。
「…頼むから、幸せにしてあげてくださいよ…」
掠れた声でそう言われた。
…もしかしてこの人…
「…僕は和くんのこと幸せにしてあげれない」
やっとの思いで出た言葉がこれで、震えそうな声を隠すので精一杯。
紺野くんはぐっと襟元を引っ張りあげる。
ちょっと苦しい…
「そんなのアンタが決めることじゃない。幸せかどうか決めるのは和」
大人しそうな彼が強い目で僕を見る。
「和のこと考えてるみたいなこと言ってますけど、要は自分が傷つきたくないってのもあるんでしょ」
図星だった。
もし受け入れてくれなくて、和くんが耐えきれなくなったら、離れたら…
そう思うと怖くて言えないし聞けなかった。
「…こんなのアンタに頼むなんて悔しいけど、…好きなら大切にしてやってくださいよ。アイツには、笑ってて欲しいんです」
そう言ってぱっと手を離されて若干持ち上げられてた僕はすとんと座り込む。
そのまま紺野くんは去っていった。
「……は…はは…」
過ぎ去った嵐に力が抜けて笑えてきて
そのままアスファルトの上に寝転んで目を瞑る。
『あの…えと、白さん…?』
初めて出会った時。
『…それもあります。けどそれだけじゃない、玲音のこともっと知りたい』
知りたいと言ってくれた日。
『触るなって言っただけで連絡すんななんて言ってない!!』
無茶苦茶で可愛い我が儘。
『…俺…玖音のこと…っ』
伝えようとしてくれた言葉。
『ご…ごめ…』
傷つけて泣かせた顔。
全部思い出せる。
思い出せるのに…今隣に君はいない。
これから先そんなのに耐えられるのか…?
本当に離れた方がいいなんて思ってるのか?
僕は
本当はどうしたい?
そんなのもう決まってた。
決まってるのに気づかないようにしてた。
「…あーもう、こういう柄じゃないのに…」
独り言を呟いて立ち上がる。
誰かを好きになるなんてもうないと思ってた。
好きになってはいけないと思ってた…
受け止めてくれるかわからない、けど
伝えたいことがあるから、
どうか聞いてほしい。
本当の気持ちを。
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