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「ん、そっか」
話し終わると玖音が柔らかく笑って腕を広げられた。
「…?」
「おいで」
俺に向かって腕を広げて笑う顔に
何故かひどく安心して…泣きそうになって思い切り抱きついた。
背もたれに身体を預けて受け止めてくれて背中を撫でられた。ぎゅうっと顔を埋める。
「話してくれてありがとう」
「…うん…」
「何で泣いてるの」
苦笑いされて子供をあやすように背中を一定のリズムで叩く。
何でかわからないけど涙が出て止まらなくなる。
受け入れてくれたことに安心したのかぽろぽろと玖音の服を濡らしていった。
「…けど僕はその男に感謝しないとかな」
「…え?」
言ってる意味がわからなくて顔を合わせると「レイプは最悪だけどね」と付け加えて俺の髪を撫でた。
「だってもしそれがなかったら、和くんは僕と出会うことはなかったでしょ?」
「…」
「意味の無いことなんてないんだよ。…それがいい方か悪い方かはわからないけど」
抱きしめられて玖音の言葉を頭の中で繰り返していた。
…そんな考えしたことなかった…
俺にとってあれは最悪以外の何者でもなくて。出来ることなら記憶から消したい過去だったけれど、
あれがなくて転校してこなかったら、
涼や悠太郎と友達になることもなくて
俺が男とのセックスにハマらなかったら、
そもそも玖音と出会うこと自体なかったかもしれない。
きっと、何もなくてあのまま若菜と付き合ってるのもそれはそれで幸せだったんだと思う。
…けど、今この記憶を持ったまま戻ったら、俺は玖音と出会わない人生を選べるのかな。
…そんなの…
「…感謝なんてしねえよあんな奴」
「そうだよね、ごめん」
「…玖音に会えたのは、偶然なんかじゃないよ」
ぎゅっ服の裾を握りしめて見つめる。
「必然だったって思いたい」
若菜といるときの幸せで穏やかな時間も好きだった。
けど玖音みたいに想って苦しくて、言葉一つに笑って泣いて愛おしくて堪らないなんて、そんな感覚も初めてだったんだ。
臭いセリフだったけど、そう思いたかった。
「そうやって無意識で可愛いこと言う」
「…うるせ…」
可愛いと言われるとなんか恥ずかしくなって顔を背けると額にキスを落とされた。
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