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呼吸が一気に苦しくなる。
…何で、何で桃瀬が若菜の携帯から。
身体が植え付けられた恐怖で小刻みに震えだす。
『酷いなあ、何も言わずにいなくなっちゃうんだもん。抱き合った仲なのにつれなくない?』
「…ふざけんな…」
けどめちゃくちゃに震えそうになってるのを悟られたくなくて強がって言い返す。
本当はあの頃を思い出してめちゃくちゃに怖いのに…ビビってるなんて思われたくなかった。
…っていうか…
「…若菜は?」
あの話をしたから、きっとそう簡単に若菜が俺のことをコイツにばらすわけない。
…何となく嫌な予感がしてた。
『若菜なら携帯借りるためにちょーっと眠ってもらってるよ。だってさー教えてくれないんだもん黒田くんの居場所』
…やっぱり、
きっと俺が使われたのと似たような薬を盛られたんだろう。
そしてそんな目にあっても俺が今どこにいるって言わなかったという事実に胸が締め付けられた。
『この間いきなり和に謝れって言われて、ああこいつやっと気づいたんだ〜って笑っちゃった』
「…は…?」
『鈍感すぎ、黒田くんめちゃくちゃ俺に怯えてたのになーんにも気付かないでほんとお気楽だよね』
「お前…それ若菜に言ったのか?」
ふつふつと腹の奥に怒りが込み上げてくる。
何てこと…
クズ野郎なのは知ってたけどここまでだと思ってなくて唖然とする。
若菜が悪いことなんて何も無いのに…追い詰めて、傷をじわじわと抉る狡いやり方。
電話の向こうで嫌な感じで笑う気配がした。
『まあ…そんなのどーでもいいからさ、俺黒田くんと久しぶりに会いたいなーって思ってたんだよね』
「…何言って…もうお前と会うつもりもない。誰が行くか…」
冗談じゃない。
こいつの本性を知ってて…行くわけない。
早く会話を終わらせたくて切ろうとしたら、『ふうん』と冷たい声がして信じられない言葉を続けた。
『来ないと若菜やっちゃうよ』
「……は…」
信じられなかった。
仮にも友達だぞ?若菜はお前のこと友達って思ってて仲良いって言ってる奴で…
あんな酷いことを言って更に傷つけるってのか…?!
「…なに、言って…」
『まあそれはそれで黒田くん的にはラッキー?自分を男に掘られる目に合わせた奴に復讐出来るもんね』
「っふざけんな!!んなこと思ってねえし、若菜には関係ないだろ!!」
『本当にそう思ってる?全く関係ないって?あの頃一ミリでも若菜が俺を紹介しなければって思わなかった?』
「…っ…」
『…そうだよね?思うよね普通。それでいいんだよ。だって実際問題若菜が引き合わせなきゃ…』
「やめろ!!!」
はあ、はあ、と呼吸が荒くなる。
…やめてくれ…もうやだ、聞きたくない…
コイツのこういう所が苦手だった。嫌だと思う部分を抉って弱らせて…
…一番嫌なのはそれが間違いじゃないって事。
若菜は悪くないのに、悪くないって思ってるのに…っ
何で言い返せないんだよ…
『…22時までにあのカラオケの前。待ってるね』
プツ…ッ
ツー…ツー…
一方的に決めて通話を切られる。
冷たい電子音が遠くに聞こえた。
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