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.(悠太郎side)
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朝日が差し込んで雪の反射している白い輝きに目を細め手空を見上げた。
うん、快晴。いい天気!
「ふぁー…がんばるか」
冬場だと体育館も混雑するから週に少ししか当たらない時間を無駄にする訳にもいかないから頭を叩き起して学校に向かって歩き出す。
まだ時間に余裕あるしランニングも含めて走るか、と思って教科書も大して入っていないカバンを背負い直して軽く準備運動をしながらスマホで時間を確認した。
俺の家から学校まではチャリで20分もあれば着くから走りなんて余裕だった。
「よーし!目標15ふ…」
気合を入れようと独り言を呟いてる途中でその言葉が消えた。
…あれ。
反対側の道路に俺とすれ違う方向に歩いてる人…あれ和じゃね?
なんで朝からこんなとこに…
しかも制服着てないし。随分ふらついてるし…
…あ!わかった!あいつオールとかしてサボろうとしてるな!
真白くんと付き合い出してからちょこちょこ学校休むようになったからたるんでるなと思ってた。
ため息をついて横断歩道を渡ってその背中を追いかける。
サボリは許さない!!そして朝練も出てもらう!!
「なーごーみ!!」
少し距離が近くなったから名前を呼んだ。
けど聞こえてないのか聞こえないふりなのか俺には一切反応しないでそのまま先を歩き続けた。
…なんだあ?聞こえなかったのかな…
結構でかい声で呼んだつもりなのになって疑問に思いつつ、いつものように後ろから覆い被さって頭を腕の中に抑え込んだ。
「んだよ無視す…ってわわわ!?」
体重をかけたらそのまま和は踏ん張ることもなく前のめりになって転びそうになった。
慌てて後ろに引き上げて体制を戻す。
腕を掴んだけどまるで力が入ってない。
そこでやっと様子がおかしい事に気づいた。
「…和?なんか変だぞ…」
俯いたままの和の肩を掴んで向き合うように支える。
そして和の有様を見て言葉を失った。
腕を掴んで捲りあがった手首を一周する赤い痕。髪の毛も乱れてて辛うじてコートは羽織ってるけど中のシャツのボタンが千切れて意味をなしてない。このクソ寒い冷気に直接当たってた肌は真っ赤になってて…いつか見た赤紫色の鬱血の痕が散らばって腹の辺りには白いものがこびりついてた。
…これって…
鈍い俺でも流石に何があったかなんて察するのに充分すぎる。
「…おい…」
「…」
揺すっても焦点が合ってないような虚ろな目をして光がなくて少し怖くなった。
…なんで、
「和!!!」
思わず出た大きい声に自分でもびっくりして和の肩がびくっと跳ねた。
…何だこの怯えっぷり…
周りの人の視線がチラチラ集まってることに気づいてとりあえず人気の少ない路地裏に連れ込んで和の顔を覗き込んだ。
「どうしたんだよ…何があった?」
「……ぁ…、ゆう…たろ…」
酷く怯えていて不安に揺れた瞳がやっと俺を捉えた。
瞬間ぼろぼろと目から涙が溢れてきて驚いてる俺の制服の裾を遠慮がちに掴んで震えてた。
「…ぅ…っゆぅ…」
震えた声で俺に助けを求めて、今にも崩れてしまいそうな儚さに不安になる。
…前に真白くん絡みの時にこんな風に泣いて縋られた時があったけど、それとは全然違う。
とりあえず歩くのも大変そうだからリュックを前にして和に背を向けてしゃがみこむ。
部活も大切だけど今は和をこのまま一人で帰すのはまずいと思った。
「ほら、歩くの辛いんだろ。足引きずってるし。タクシー見つけるまで乗ってろ」
「……」
照れ屋だから嫌だって駄々こねるかと思ったけど素直に乗ってきた。
そのくらい追い詰められてると思うと可哀想でならなくて…
背中に触れる肌が上着を伝って冷たく感じた。
どのくらいの時間外でこうしてたんだろう…
______
「風呂入れたからとりあえず温まって洗ってこい」
「…ごめん…」
「バカ、いいから」
タクシーを捕まえてすぐ和の家に向かって部屋に上がってその辺に落ちてた適当なスウェットに着替えさせて風呂の準備だけした。
あの有様じゃそれが一番優先だと思った。
家に着いた和は少し落ち着いたみたいでやっとまともに会話出来るようになった。
…けど、聞いていいのか…
思い出させたくもないけど何があったのか知らないとどうしようも出来ない。
なるべく怖がらせないように床に座り込んだままの和の前にしゃがんで頭に手を置いて見つめた。
「答えたくなかったら答えなくていいから。…誰にやられた?」
「……」
きゅっと唇を結んで黙り込んでしまう。
…まだだめか。
「まさかだけど、真白くんじゃないよね?」
けどその言葉にはちゃんと首を横に振った。
よかった…もしDVとかだったらどうしようって思った。いや、 よくはないんだけど…
まああの二人の雰囲気からDVなんて想像はしてなかったけど。
「真白くんに連絡した?」
「…して、ない…」
「しておこうか?」
「っ、いい、いい…」
「でも…」
「お願い…まだ言わないで」
何故か頑なに拒否するから頷くしかなくて…
それ以上は聞けないから肩を支えて風呂場まで連れていった。
…これ洗濯しといた方がいいよな。
さっきまで着てた冷えきって汚れてる服を集めたけど脱衣所にいると和落ち着けないかなって思ってとりあえず別に置いておいた。
その時にズボンのポッケにスマホと財布が入ってるのを見つけて取り出した。
物取りってわけじゃなさそうだし、完璧和を狙ったってことだよな…
…許せない…
ふつふつと込み上げる怒りにぎゅっとスマホを握りしめて部屋の中の片付けをした。
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