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「…じゃあ…帰るよ?」
「うん、ありがとう」
玄関でドアノブに手をかけながら心配そうに振り返る悠太郎。
結局夜まで居てくれて、多分声掛けなかったらずっと居そうだったから「もう大丈夫」って言って帰すことにした。
それでもやっぱり気にしてくれてるのか中々外に踏み出してくれなくて苦笑い。
流石にもう迷惑かけれないし…スマホも確認しないと。
一度も見てないスマホにはきっと玖音からの連絡が沢山届いているんだろう。
…ずっと無視してる訳にもいかないから。
「大丈夫、ね。明日から連休だし、ゆっくり休むよ」
「…おう…」
なるべく笑顔を見せて背中を押して送り出す。
あんまりこういう関係で悠太郎に心配かけたくないんだ…
「…なんかあったら連絡しろよ!すぐ来るから!」
「うん」
心強い味方がいてくれるってそれだけで救われた。
いつも助けてくれてありがとう。
悠太郎の言葉に頷けばにかっと笑ってくれて背を向けて帰る後ろ姿をしばらく見つめてから部屋に戻った。
鍵を閉めてドアにもたれかかる。
そんなわけないのに、早く閉めないとアイツが来そうな気がして怖かった。
「…はぁ…っ」
どくどく嫌な音を立てる心臓を抑えて落ち着かせてからポケットにある真っ暗な画面のスマホを取り出す。
…電池いつから切れてたのかな。
ふらつく足でリビングに戻り座り込んで充電器をコンセントと差込口に繋げて画面が明るくなる。
案の定画面に並ぶのは玖音のもので…ぎゅっと唇を噛み締めた。
昨日の夜中からずっとだ…最新ので10分前。
ずっと探してくれてたのに何も連絡しないで今こうしてることが凄く申し訳なくなって、震える指先でやっとの思いでリダイヤルを押した。
RRR…
ワンコールもしないうちに、ガチャガチャ!と何かがマイクに擦れる音が煩く響いて少し頭に響いて顔を顰めた。
『和くん!』
「……っ」
『…はぁ…よかった、連絡ついた…』
けどすぐ繋がって電話の向こうから玖音の吐息が聞こえて…
声を聞いただけで胸が締め付けられて、本当は昨日のことを謝ってうまい言い訳を探って何事も無かったかのようにしよう。そうすれば今までと変わらないでいられるからって思ってたのにそんな考えは全部崩れてしまった。
…隠せない、隠してることが苦しくて俺が耐えられない…
「っ…ひぅ…」
『…、…和くん?』
「…ごめ、ごめんなさ…ッ」
主語も何もない言葉でいきなり謝っても訳分からないのにそれしか言えなくて溢れる涙を手で擦りながら何度も謝った。
「ひ、く…っ、ごめん…」
『…いいよ。無事だったんならそれでいいから…泣かないで』
「違う、…ちがわ、ないけど…そうじゃなくて…っ」
そうじゃないんだ。
謝りたいのは…それだけじゃない。
けど息が詰まって上手く喋れない。
「ぇぐ、…っう…ッ」
『…今どこにいるの?』
「ん…、い、家…っ」
『すぐ行く』
待ってて、って言葉が声が凄く優しくて「ん…っ」て頷いたら「いい子」って言って電話が切れた。
…会いたい。声を聞いてしまったらもう…会いたくて仕方ない。
離れる覚悟なんて全然出来てなかった…
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