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玖音が俺の手を包んだまま悠太郎に向かって微笑んだ。
「だから許してあげて、ね?」
「……」
悠太郎が少しだけ視線を逸らして俯く。
そしてしばらくそうして若菜に向かって「ごめん」って小さく呟いて若菜が首を横に振った。
傷ついてないわけない。
俯いて微かに震えてるのを支えてやりたい。
(けど…不安にさせたくない)
すぐに彼女のそばに寄れないのは後ろで手を繋いでる愛おしい人を傷つけたくないから。
若菜に優しくしてやりたい気持ちと玖音の手を離したくない気持ちがゆらゆら天秤に揺られる。
ハッキリしないとどちらも傷つけるのがわかってるはずなのにどうして声が出ないんだろう…
きゅっと唇を噛んで居た堪れない空気に俯いていたら指をゆっくり解かれてぽん、と背中を押されて足を踏み出した。
「わ…っ」
「…!」
若菜の目の前に飛び出して近い距離で目が合う。背中を押した主を見れば優しい顔をしていて困惑する。
「…玖音?」
「いっておいで」
目を細めて笑う玖音はとても綺麗で
言葉はそれ以上何も無かったけれど「信じてる」ってそう言われてるような気がした。
つんと鼻の奥が痛くなって誤魔化すために俯いて若菜の腕を引く。
…何で考えてる事が分かるんだろう…
敵わないな、本当に…
「…場所変えよ」
「あ…うん…」
戸惑う若菜を連れてそのままみんなに背を向けて歩き出す。何故かわからないけど玖音を見たら泣いてしまいそうだった。
二人とも俺にとって大切な人に変わりはない。
…だから俺がしなきゃいけないことは…もうわかってる。
「……いいの?真白くん」
悠太郎が二人の背中を見ながら小さく問いかけた。
同じように二人を見つめて呟く。
「うん。もう近寄らないようにしておいたから」
「そうじゃなくて、二人きりにさせていいのかってこと。だってあの子…」
涼が言いかけた言葉を察して少しだけ眉を下げて寂しそうな笑みを浮かべた。
「いずれ和くんが乗り越えなきゃいけないことだから、遅かれ速かれこうなるって思ってたよ」
僕か、彼女か。選ぶのは和くん。
僕の事を好きだと伝えてくれてるのを疑った事なんてない。けれどきっと彼女のことを好きなのも嘘じゃない。
久しぶりに再会して別れ方が別れ方だから未練…なんてのもあるのかもしれない。
それでも送り出したのはちゃんと君の意志に君が向き合って答えを出して欲しいと思ったから。
「…信じてみたくなっただけ」
自らの耳に手を伸ばして鎖に触れる。
こんな束縛アイテムを貰うのもあげるのも初めてでくすぐったい気持ちになる。
君と僕が出会ったのは運命だったと
永遠とか愛とかそんなの信じなかったけど願わくば君のその相手が僕であるようにと、
そんなの不確かなものを試すみたいに君の背中を押した。
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